事業売却とは?メリットやデメリットと事業価値の算出方法について解説

事業売却

事業売却を検討しているものの、そのメリットやデメリット、税金面での影響に不安を感じていませんか。

実際、多くの経営者が「本当に事業を売却して大丈夫なのか」「税金の仕組みがよくわからない」という悩みを抱えています。

この記事では、事業売却のメリット・デメリットを売り手・買い手の両面から解説し、発生する税金についてもわかりやすく解説します。

目次

事業売却とは

事業売却とは、企業や個人事業主が特定の事業や事業部門を第三者に売却する取引のことです。

この取引では、事業に関連する資産や負債、従業員、取引先との関係などが一括して譲渡されます。

事業売却が選ばれる理由は、経営資源の最適化を図れることにあります。たとえば、本業に経営資源を集中させたいとき、事業承継の選択肢として検討するとき、あるいは新規事業に力を入れたいときなどが該当するでしょう。

このように事業売却は、企業の成長戦略や事業再編において重要な選択肢となっています。経営者にとって、将来を見据えた判断が求められる重要な意思決定といえるでしょう。

事業売却売り手側のメリット・デメリット・発生する税金

事業売却における売り手側の立場を詳しく見ていきましょう。資金面での利点から税金面での注意点まで、事業売却を検討する際に把握しておくべきポイントを解説します。

メリット

事業売却は、売り手企業に大きな経営上の利点をもたらします。最も重要なメリットは、事業資産を現金化できることにあります。

この資金を活用することで、新規事業への投資や負債の返済など、柔軟な資金運用が可能となるのです。たとえば、成長が見込まれる主力事業に経営資源を集中させたり、新たな市場への参入資金として活用したりできるでしょう。

さらに、後継者不在の課題を抱える企業にとっては、従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら事業を継続できる有効な選択肢となっています。このように事業売却は、企業の持続的な発展を支える重要な経営判断といえます。

デメリット

事業売却には慎重に検討すべき課題もあります。とくに注意が必要なのは、譲渡手続きの複雑さと時間的なコストです。

従業員との雇用契約や取引先との契約引継ぎには、それぞれの同意が必要となります。また、競業避止義務により、同種の事業展開が制限される可能性もあるでしょう。さらに、事業譲渡に伴う従業員の不安や取引先との関係変化は、企業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。

このようなデメリットを最小限に抑えるためには、専門家の助言を受けながら、綿密な計画と準備を進めることが重要です。

発生する税金

事業売却では、適切な税務処理が重要です。主な税金として、譲渡益に対する法人税があり、原則税率23.2%が適用されます。

また、建物や設備などの譲渡には消費税も発生します。ただし、土地や有価証券は非課税となっているため、資産の種類によって税務上の取り扱いが異なることに注意が必要です。さらに、個人事業主の場合は、所得税の対象となり、資産の種類に応じて異なる税率が適用されます。

このように複雑な税務処理を適切に行うためには、税理士などの専門家に相談し、事前に十分な対策を講じることが不可欠です。

事業売却買い手側のメリット・デメリット・発生する税金

事業売却において、買い手側にはどのような影響があるのでしょうか。ここでは、買い手側の視点から、メリットやデメリット、発生する税金について詳しく解説します。

メリット

事業売却は、買い手企業に大きな成長機会をもたらします。最も注目すべき利点は、必要な事業資産のみを選択的に承継できることでしょう。

この選択的な承継により、不要な負債やリスクを避けながら、効率的な事業拡大が可能となります。たとえば、既存事業との相乗効果が期待できる資産だけを取得したり、新規市場への参入に必要な経営資源を効率的に確保したりできます。

さらに、のれん償却による節税効果も見込めるため、財務面でも有利になるのです。このように事業売却は、買い手企業の戦略的な成長を後押しする重要な選択肢となっています。

デメリット

買い手側が直面する課題として、税負担と契約関係の再構築があります。とくに、高額な資産を含む事業の譲受では、消費税などの負担が大きくなることがあります。

また、従業員との雇用契約や取引先との契約を個別に引き継ぐ必要があり、この過程で予期せぬ問題が発生する可能性もあるのです。さらに、従業員のモチベーション低下や取引先との関係変化など、人的な課題にも注意が必要でしょう。

このような潜在的なリスクを最小限に抑えるため、事前の綿密な調査と関係者とのコミュニケーションが不可欠です。

発生する税金

買い手側の税務面では、取得する資産の種類によって異なる税金が発生します。建物や設備、棚卸資産などには消費税がかかり、事業規模によっては大きな負担となることもあります。

また、不動産取得の場合は、不動産取得税や登録免許税も必要です。土地や建物の評価額によって税額は変動しますが、事業譲渡における重要な検討項目の一つとなるでしょう。

このように複雑な税務処理を適切に行うためには、専門家への相談を通じて、事前に十分な対策を講じることが重要となります。

事業価値の算出方法

事業価値を正確に算出することは、売り手と買い手の双方にとって重要な課題です。ここでは、主要な算出方法とその特徴について解説します。

DCF法

DCF法は、将来の収益性に着目した事業価値の算出方法です。企業が生み出す将来のキャッシュフローを現在価値に換算し、事業価値を導き出します。

この手法では、売上高や営業利益などから将来のフリーキャッシュフローを予測し、それを適切な割引率で現在価値に換算します。たとえば、高成長が見込まれる事業では、その成長率を考慮した将来予測を行えるでしょう。

このように、DCF法は将来の収益性を重視した理論的な評価手法として、多くの場面で活用されています。

類似会社比較法

類似会社比較法は、同業種の上場企業のデータを活用して事業価値を算出する手法です。PER(株式収益率)やPBR(株価純資産倍率)、EV/EBITDA(企業価値倍率)などの指標を用いて、市場実態に即した評価を行います。

この方法の特徴は、実際の市場データに基づく評価が可能なことにあります。たとえば、同じ業界で似たような事業規模や収益構造を持つ企業の指標を参考に、より現実的な価値算定ができるでしょう。

ただし、適切な比較対象の選定が重要で、それによって評価結果が大きく変わる可能性があります。

純資産価額法

純資産価額法は、企業が保有する資産から負債を差し引いて事業価値を算出する手法です。時価ベースでの資産・負債の評価を行い、より実態に即した価値を導き出します。

この方法は、とくに不動産や有価証券などの資産を多く保有する企業の評価に適しています。ただし、将来の収益性や成長性は反映されにくいため、他の評価方法と組み合わせて使用することが一般的です。

その他の補完的な方法

配当還元法やリアルオプション法など、事業価値の算出にはさまざまな補完的手法があります。これらは事業の特性や評価の目的に応じて使い分けることが重要です。

たとえば、安定的な配当が見込める企業では配当還元法が、不確実性の高い新規事業ではリアルオプション法が有効かもしれません。実務では、複数の手法を組み合わせることで、より精度の高い評価が可能となります。

事業売却の手続き手順

事業売却の手続きは、準備段階から完了後のケアまで、9つの重要なステップで構成されています。それぞれの段階で適切な対応が求められますので、順を追って解説します。

  1. 準備段階
  2. 基本合意の締結
  3. デューデリジェンスの実施
  4. 取締役会および株主総会の承認
  5. 事業譲渡契約の締結
  6. 関係者への通知・公告
  7. 資産・負債の引き渡し
  8. クロージング
  9. アフターケア

1.準備段階

準備段階では、売却の目的を明確にし、事業価値の評価を行います。M&Aアドバイザーや税理士などの専門家と連携しながら、最適な売却先の選定も進めていきましょう。この段階での入念な準備が、その後の円滑な手続きにつながります。

2.基本合意の締結

基本合意では、秘密保持契約を結び、売却の条件について大枠の合意を行います。譲渡対象の範囲や価格の目安、スケジュールなどを文書化し、双方で確認します。この合意が後の本契約の土台となるため重要なステップです。

3.デューデリジェンスの実施

デューデリジェンスでは、買い手側が事業の詳細な調査を行います。財務、法務、人事など、多角的な視点から事業を精査し、リスクの把握と適正価格の算定を進めていきます。

4.取締役会および株主総会の承認

経営判断の正当性を担保するため、取締役会での承認を得ます。また、重要な資産の譲渡となる場合は、株主総会の特別決議も必要となるでしょう。

5.事業譲渡契約の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、具体的な契約内容を確定します。譲渡対象や価格、保証条項など、重要事項を漏れなく契約書に盛り込みます。

6.関係者への通知・公告

取引先や従業員、債権者など、関係者への適切な通知を行います。とくに重要な取引先には丁寧な説明を心がけ、円滑な事業継続を図ります。

7.資産・負債の引き渡し

合意した資産や負債の移転手続きを進めます。不動産の登記変更や設備の引き渡し、契約の承継など、必要な手続きを確実に実施します。

8.クロージング

譲渡対価の支払いと資産の引き渡しを行い、取引を完了させます。最終的な書類の確認や関係者への報告も、この段階で実施します。

9.アフターケア

取引完了後も、一定期間は業務引き継ぎのサポートを行います。従業員のケアや取引先との関係維持など、事業の安定的な継続をサポートします。

まとめ

事業売却は、企業の成長戦略や事業承継における重要な選択肢の一つです。メリットとデメリットを十分に理解し、税務面での影響も考慮しながら、慎重に判断することが大切です。

とくに実務面では、準備段階からアフターケアまで、各ステップで適切な対応が求められます。専門家のサポートを受けながら、売り手・買い手双方にとって有益な取引を目指しましょう。

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