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M&Aにおける株式譲渡とは?事業譲渡の違いとメリット、デメリットを解説

M&A株式譲渡

M&Aにおいて、その一般的なスキームとして知られているのが、「株式譲渡」です。

M&Aのスキームでは、株式譲渡の他にも「事業譲渡」が存在し、実務ではケースバイケースでどちらも選択できるようになっています。

そのため、株式譲渡の他、場合によっては事業譲渡を選択するケースもあります。

そこで、この記事では、M&Aにおける株式譲渡について解説し、事業譲渡との違い、メリットとデメリット、株式譲渡に関する税務等についても解説していきます。

この記事でわかること

  • M&Aの株式譲渡とは?
  • 株式譲渡と事業譲渡の違い
  • M&Aの株式譲渡のメリットとデメリット
  • 株式譲渡の税務について
目次

M&Aの株式譲渡とは?

株式譲渡とは、保有株式を売り手から買い手に譲渡するM&Aスキームです。

株式の過半数を取得すれば、株主総会での役員選任や定款変更などが可能となるからです。株式譲渡によって、対象会社の経営権を容易に取得でき、しかも煩雑な手続きを必要としません。

この章では下記の項目についてわかりやすく解説していきます。

  • 株式譲渡のスキームの特徴
  • 事業譲渡株式譲渡はM&Aを象徴するスキーム
  • 株式譲渡にはどんな方法がある?
  • 買い手と売り手のポイント

株式譲渡のスキームの特徴

M&Aで最もよく採用されているスキームが「事業譲渡」ですが、同じぐらいの割合で実施されているのが、「株式譲渡」です。

この章の最初でもご説明しましたが、株式譲渡とは保有株式を売り手から買い手に譲渡するM&Aスキームのことです。

対象会社の株式の過半数をM&A等で取得すると、買い手は株主総会での役員選任や定款変更などができるようになるため、経営権を取得して自由に経営を進められるようになります。

事業譲渡と株式譲渡はM&Aを象徴するスキーム

M&Aのスキームには次のようなものがあります。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 合併
  • 会社分割
  • 現物出資
  • 現物分配
  • 株式交換
  • 株式移転
  • 第三者割当増資

これらのM&Aスキームのうち、事業譲渡と株式譲渡の実施割合は、4割以上を占めています。

こうした理由から、この2つのスキームは、M&Aを象徴するスキームであると考えられます。

採用する手法が異なると、会計や税務のほか、メリットやデメリットなどが大きく異なることから、適切なM&Aスキームを選んで手続きを進めなければならないでしょう。

株式譲渡にはどんな方法がある?

株式譲渡にもいくつかの種類がありますのでまとめてご紹介しておきます。

  • 相対取引
  • 市場買付
  • TOB(株式公開買付)

相対取引

直接交渉により、株式を譲渡する方法です。

未上場会社に対しては、相対取引を行うのが普通です。

市場を通さない取引となるため、譲渡価格を決めるのに時間を要します。

市場買付

対象会社が株式上場している場合は、株式市場から対象会社の株式を購入してM&Aを進めていきます。

ただし、発行済株式総数及び潜在株式総数の5%を超えてしまうと、財務局へ「大量保有報告書」を提出しなければなりません。この報告書によってM&Aの事実が周囲に明らかになってしまうことがあります。

連結子会社化を希望する場合は、株式公開買付(TOB)を選んだほうがいいでしょう。

TOB(株式公開買付)

多数の株主から公告によって買付の申し込みを行い、市場外で対象会社の株式を買い取っていく方法です。

市場外で5%超の買付を行う場合は、TOBが強制されることになるでしょう。

市場買付でも株価が高騰することがありますが、TOBでも同等の金額のプレミアム分を乗せた高い株価での買い取りを行うのが通常です。

買い手と売り手のポイント

株式譲渡を実施する場合は、買い手と売り手の二者が存在することにご注意ください。

買い手のポイントは、従業員との雇用関係、取引先との契約、利害関係者との法的関係、許認可などに影響がないのでスムーズな取引が可能なことです。

しかし、非事業用資産や簿外債務なども引き継いでしまう恐れがありますので注意が必要でしょう。

売り手のポイントは、譲渡対象企業の法人格がそのまま維持されることです。

会社がそのままの状態で残り、対象会社への影響があまりありません。

株主が個人のケースでは、所得税や住民税が分離課税で低く抑えられるため、M&Aでの売却手取り額が多くなるケースが増えます。

株式譲渡と事業譲渡の違い

この章ではM&Aでよく実施されているスキーム、株式譲渡と事業譲渡の違いについて解説します。

  • 事業譲渡とは?
  • 株式譲渡と事業譲渡との違い

事業譲渡とは?

株式譲渡とよく比較されることの多い事業譲渡についても簡単に解説します。

事業譲渡は、事業の一部または全部を他の会社に譲渡するようなスキームのことです。

株式譲渡は、債権債務、許認可、雇用契約などがそのまま引き継がれますが、簿外債務のリスクがあると考えられる場合は、事業譲渡を利用します。

事業譲渡なら、一部の事業だけを取引する個別契約で済むからです。

事業譲渡は対象会社の規模が大きいと、個別契約を結ぶのに多くの手間と時間がかかってしまうデメリットがあります。

株式譲渡と事業譲渡との違い

この章では株式譲渡と事業譲渡の違いを整理して表にまとめました。

株式譲渡事業譲渡
譲渡対象株式事業の全て又は一部
対価の受け手譲渡対象企業の株主譲渡対象企業
譲渡対象企業の経営権存続しない存続する
売り手の税金所得税住民税法人税等消費税
買い手の税金なし消費税不動産取得税登録免許税

ポイントは、事業譲渡ではM&A後も譲渡対象企業の経営権が存続するということです。

事業譲渡は、時価評価になるため、簿価との差額が生まれ、課税関係が生じ、売り手も買い手も法人税等も考慮しなければなりません。

また、消費税の課税関係を考慮しなければなりません。

M&Aの株式譲渡のメリットとデメリット

この章では株式譲渡に関する売り手と買い手のメリットとデメリットについて整理しました。

株式譲渡のメリット

  • 手続きがシンプルで短期間で済む(売り手側・買い手側)
  • 従業員の雇用や取引先との関係を維持できる(売り手側)
  • そのまま事業継続が可能(売り手側・買い手側)
  • 税金の支払いが少ない(売り手側)
  • スピーディーな自社成長(買い手側)
  • 税制措置の利用が可能(買い手側)

手続きがシンプルで短期間で済む(売り手側・買い手側)

株式譲渡の手続きはシンプルです。しかも契約締結から代金の決済までの手続きも簡単です。

株主は変わりますが、譲渡対象企業側での変更点が少ないということです。

従業員の雇用や取引先との関係を維持できる(売り手側)

従業員の雇用、取引先との契約も今までの関係を維持できます。

買い手側に決定権が移ったとしても、これまでの関係を変える必要がなくそのまま維持できるスキームです。

そのまま事業継続が可能(売り手側・買い手側)

買い手企業の子会社となった後、売り手側の人材や資産、ノウハウを活用して事業を発展させながら事業継続が可能であることから、売り手側と買い手側の双方にメリットがあります。

税金の支払いが少ない(売り手側)

個人と法人では、かかる税金の仕組みが異なります。

個人の株式譲渡には、約20%が課税されますが、事業譲渡になると、譲渡益に対して約34%の法人税等が課せられます。

そのため、個人の株式譲渡のほうが、税額は安くなると考えられます。

また、個人株主には給与や配当もあり、手取り総額も個人のほうが多いケースが増えます。

自社成長が早い(買い手側)

株式譲渡なら短期間で新規参入や事業拡大ができます。

株式譲渡では、株式の過半数を取得すれば、経営の支配権を取得できるため、自社成長の速度を短期間で加速させることができます。

意思決定もスムーズになり、売り手側から獲得したブランド、ノウハウ、販売網などを活用できる点もメリットです。

買い手に有利な税制措置の利用が可能(買い手側)

2021年からは、「中小企業事業再編損失準備金」がスタートしています。

この制度は、買い手側が株式譲渡を実施すると、その7割をその期の税務上の損金として算入できるものです。

そして、5年間の据え置き期間後に6年目から1/5ずつ取り崩し、税務上の益金に算入できます。

一時的な課税の繰り延べとなり、節税効果があります。

株式譲渡のデメリット

株式譲渡のデメリットについてもしっかりと確認しておきましょう。

  • 株主全員の同意が必要となること(売り手側)
  • 不採算事業があると譲渡価値が低下(売り手側)
  • 株式譲渡制限のある会社(売り手側)
  • 投資額が増える傾向(買い手側)
  • 簿外債務などの潜在的リスク(買い手側)
  • 多数の株主の存在(買い手側)

株主全員の同意が必要となること(売り手側)

株主全員の同意を必要とするため、100%の株式譲渡を行うことが困難なケースがあります。

株主数が多いと、反対する株主や連絡できない株主も多いからです。

不採算事業の発覚で譲渡価値が低下(売り手側)

デューデリジェンスなどで、不採算事業の存在がわかると、企業価値が下がり、譲渡価格も下げられてしまうでしょう。

株式譲渡は、事業譲渡のように不採算事業の切り離しができないからです。

また、多額の借入金があると、買い手がつかなくなる恐れもあります。

株式譲渡制限のある会社(売り手側)

株式譲渡制限(株式譲渡制限会社)によって、自社株式を自由に売買できないという制限がかかっていることがあります。

例えば、非公開会社などです。

中小企業は、自社株式の譲渡に制限をかけていることが多く、株主総会、取締役会などで承認を得る必要があります。

投資額が増える傾向(買い手側)

現預金や売掛債権などの純資産が多いと、買い手側の投資額も同じように高くなってしまいます。

財務内容がよいからこそ、M&A投資額も多くなるということです。

このケースでは、役員退職金を使って投資額を減額するなどの買収コストを下げる対策が必要です。

簿外債務などの潜在的リスク(買い手側)

貸借対照表に記載がない債務のことを「簿外債務」と呼びます。

例えば、未払い残業代、退職給付引当金です。

株式譲渡を実施すると、簿外の負債も引き継がれます。

デューデリジェンスは重要で、簿外債務の有無を必ず確認しておきましょう。

多数の株主の存在(買い手側)

株主が多数存在し、分散していると、全株主との連絡ができずに、所在不明で交渉ができない恐れがあります。

また、全ての株主が株式の買い取りに応じるわけではありません。

株式譲渡の税務について

M&Aの株式譲渡の実務では、税務が伴うことに留意しなければなりません。

個人株主なら所得税、住民税、復興特別所得税などです。

この章では、株式譲渡の場合の税金や税金対策についてご説明します。

  • 売り手に発生する税金
  • 個人株主と法人株主の違い
  • 個人株主の場合
  • 法人株主の場合
  • 買い手は贈与税や法人税に注意すること

売り手に発生する税金

売り手に発生する税金についてまとめて整理しました。

個人の株式譲渡法人の株式譲渡
税金所得税、住民税法人税等
税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%)29.74%
課税方式分離課税総合課税
納税者株主法人

個人株主と法人株主の違い

個人株主と法人株主とでは、課税される税金が異なることに留意してください。

また、原則として売り手側に税金が発生します。

個人株主の場合

譲渡所得金額=譲渡価格−必要経費(取得費用や委託手数料など)

譲渡所得の金額を基準として、

税率は20.315%かかります。

内訳は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%です。

多くのケースで必要経費がありますので、譲渡価格がそのまま譲渡所得金額になることはありません。

個人株主の場合は、給与所得、事業所得などのその他の所得があったとしても金額が変わらないようになっています。

法人株主の場合

譲渡益の金額=譲渡価格−必要経費(取得費用や委託手数料など)

支払う税金は、

譲渡益と本業の利益に税率(29.74%)をかけた金額です。

税率29.74%=法人税等(法人税、法人住民税の法人割、法人事業税の所得割)

法人株主の注意点は、本業の利益や損失が加味される点です。

しかし、赤字の場合は、株式譲渡益と損益通算できます。

そのため、赤字の額が多いと、税金がかからないこともあります。

買い手は贈与税や法人税に注意すること

株式譲渡では、企業を譲渡する売り手側に税金がかかります。

しかし、買い手側も贈与税や法人税が発生するケースがある点にご注意ください。

取引相手が個人株主であった場合、著しく安い価格でのM&A取引が実施された場合は、買い手側に贈与税がかかります。

贈与額が多くなると、通常よりも高い税率がかかることにご注意ください。

贈与税率10〜55%

買い手側が法人株主であった場合に、上記と同じようなケースでの株式譲渡が行われた場合、買い手の法人株主には、贈与税ではなく法人税がかかります。

(適正時価−取得価格)✕法人税実効税率

課税所得が増え、税額も増えますのでご注意ください。

まとめ

この記事では、M&Aにおける株式譲渡の概要や特徴、事業譲渡との違い、株式譲渡のメリットとデメリット、注意すべき税務ポイントなどについて解説しました。

M&Aで一般的なスキームとして知られているのが、「株式譲渡」です。

そして、株式譲渡の他、場合によっては事業譲渡を選択するケースもあります。

M&Aのスキームには、株式譲渡の他にも一部だけ切り離して譲渡する「事業譲渡」が存在するため、実務においてはそれぞれのメリットが最大限に得られるような適切な選択を行う必要があるでしょう。

株式譲渡と事業譲渡との違い、株式譲渡のメリットとデメリット、株式譲渡に関する税務等についてもよく理解したうえでM&A取引を進めていってください。

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