M&A手法とは?それぞれの分類と課税について解説
大企業だけではなく、中小企業や個人事業主でも事業拡大の他、後継者の問題も増えてきています。
日本ではあまりなじみのない「M&A(企業の合併や買収)」ですが、海外企業では積極的に実施されてきたことから、日本でも2000年代以降の事例が増加しています。
この記事では、M&A実施にあたって、その手法の概要、手法の分類、各手法毎に課せられる税金などについて整理しています。
M&A手法とは?
M&Aは、Mergers(合併) and Acquisitions(買収)の頭文字を取った用語です。
その言葉が示す通り、企業同士の合併や買収のことを指しています。
さらに「業務提携」などもM&Aに含むと考えることができます。
この章ではM&A手法について整理していますので参考にしてください。
M&Aとはどのような意味なのか?
M&Aとは、Mergers(合併) and Acquisitions(買収)の頭文字を取った用語です。
簡単にいえば、企業同士の合併や買収のことになるでしょう。
「業務提携」もM&Aに含むと考えることができます。
M&Aは、「企業の乗っ取り」のようなネガティブなイメージがありましたが、2000年代以降は、友好的なM&Aが増えており、事業拡大や大きな成果を得られる経営手段として日本でも活用されています。
M&A手法は合併、買収、提携の3種類
M&A手法を簡単にまとめると次の表のようになります。
買収 | 株式譲渡第三者割当増資株式交換・移転TOBMBO事業譲渡会社分割 |
合併 | 吸収合併新設合併 |
提携 | 業務提携資本提携 |
各手法を細かくみると、株式譲渡や事業譲渡などの各種手法に細分化されていきます。
この後の章で細分化された各手法についてご紹介していきます。
M&Aを実施する目的
M&Aを実施する理由は、買い手側と売り手側で異なる目的となることから、わけて解説する必要があります。
買い手側(買収側)
強化したい事業、新規参入事業に対してスピーディーに対応でき、結果が出せることです。
買収企業の人材・技術・知識・ノウハウなどをすぐに獲得して事業拡大ができます。
他社が時間をかけて育てたリソースを買ってスピーディーな事業拡大が可能です。
売り手側(売却側)
M&Aによって、資金調達が可能となり、事業の拡大や発展に役立てることができます。
自社で培った技術や経験が無駄になることがなく、売却後も事業継続が可能です
さらに、後継者不足の解決(事業承継)などにも活用されています。
各手法にはメリットやデメリットがある!
友好的M&Aを行うには、株式取得、事業譲渡、会社分割などの各手法のメリットとデメリットをよく理解し、売り手側と買い手側の企業の双方が最大限のメリットやシナジー効果が得られる手法を選ぶ必要があります。
M&Aを成功させるには、事前の入念な準備が必要となることはいうまでもないでしょう。
M&A手法の分類
ここまでの文章では、M&Aの手法として、買収、合併、提携などの3つのタイプがあることを説明しました。
次は、3つのタイプをさらに細かく分類し、各手法についてのわかりやすい説明を追加していきます。
買収
買収とは、ある企業の議決権の過半数や事業部門を買い取ることです。
買収の主な手法には、会社分割、事業譲渡、株式取得の3種類があります。
- 会社分割
- 事業譲渡
- 株式取得
会社分割
会社分割とは、ある会社の権利義務を、他の会社に包括的に承継させる手法のことです。
- 新設分割
- 吸収分割
新設分割は、新設した会社に承継する手法です。
吸収分割は、買収側の既存の会社に承継する手法です。
承継する会社が権利義務の対価として株式を分割会社に交付するのは、「分社型分割」です。
また、分割会社の株主に株式を交付するなら「分割型分割」です。
事業譲渡
事業譲渡は、事業を譲渡する手法のことです。
譲渡対象となる事業とは、固定資産、売上などの流動資産、人材、技術などです。
複数の事業を持つ会社なら、特定の事業だけを譲渡できます。
また、債務の切り離しにも活用されています。
買収側は、必要な事業だけを獲得でき、新規立ち上げのリスクを下げ、時間・労力・コストを節約できます。
買収側は、売却企業の潜在的な債務やリスクを見極める調査や評価を徹底して行う必要があります。
株式取得
他の企業の発行済み株式を取得して、経営権を握る手法です。
過半数の株式を取得する必要があります。
2/3以上の株式を取得すれば、定款変更などの特別決議による議決権を得ることができます。
株式取得の手法
- 株式譲渡
- 株式移転
- 株式交換
- 第三者割当増資
- TOB(テイクオーバービット)
- MBO(マネジメントバイアウト)
株式譲渡は、自社株式を買収側企業に譲渡する一般的な手法で、M&A後も事業をそのまま継続できます。
株式移転は、親会社を新規に設立し、自社株式を交換することによって、新設の親会社の100%子会社にするM&A手法です。
株式交換は、他社を100%子会社化します。
その際、自社の株式を対価として譲渡します。
取得した株式を株式市場で売ることができる企業なら現金化もできます。
第三者割当増資は、株式を新規で発行し、特定の第三者に引き受ける権利を割り当てる手法です。
財務面の補強によって、企業再生や敵対的買収の防衛手段となります。
TOB(テイクオーバービット)は、株式公開買付です。
買収先の企業の株式を取得すると予め告知し、直接株式を買い取ります。
証券取引所などの金融商品取引所を介さない点が特徴です。
不特定多数の株主から買い取る必要があることや、告知しても予定数に達しない場合は、TOBが取り消されることがあります。
敵対的買収や子会社化などに利用されています。
MBO(マネジメントバイアウト)は、経営者や従業員が自社や事業部門を買収する手法です。
MBOにより、独立した経営ができるようになります。
資金調達は、銀行やファンドなどです。
上場廃止、敵対的買収の防止、事業承継などに利用されています。
合併
合併は、複数の会社を1つの会社に統合する手法です。
合併での注意点は、大きく異なる企業文化や人材が存在する企業同士の合併は難しいことです。
しかし、成功すれば、組織、人材、技術などのあらゆる面において、結束力が高まります。
合併には次の2種類があります。
- 新設合併
- 吸収合併
新設合併
既存の会社は全て消滅します。
その後、新たに合併会社を設立する手法です。
新設会社に既存の会社の権利や義務が承継されます。
吸収合併
合併する会社は1つだけになります。
残りの会社は全て消滅します。
残りの会社の権利は、存続する会社が全て承継します。
新設合併よりも吸収合併のほうを選択するケースが多くなっています。
提携
提携では、買収時のように売り手側の経営権や事業を取得することはありません。
しかし、資本の移動を伴う経営手段となり、M&Aの一種として選択肢の一つとして検討に値する手法です。
提携には次の2種類が存在します。
- 業務提携
- 資本提携
業務提携は、株式の移動などの資本の移動を伴いません。
契約を通じて、企業間の業務上の協力関係を築くことを目的としています。
うまく行けば、短期間で相互に持つノウハウや強みを活かしながら、シナジー効果が得られることがあります。
しかし、機密情報などの流出には注意しなければなりません。
生産、販売、技術などの各分野での業務提携も行われています。
資本提携は、相手企業に出資をして提携関係を結びます。
株式の持ち合いなども含みます。
資本の移動を伴いますが、経営権に影響を及ぼさないように全株式の10%未満の出資額に抑えられています。
相手企業の株主となり、経営上の意見交換などが可能です。
共同研究や共同販売などの共同事業を行う場合は、資本業務提携契約を結びます。
各M&A手法に課せられる税金
M&Aを選択する場合は、発生する税金の知識についてもよく知っておく必要があります。
特に株式譲渡や事業譲渡などで多額の金銭のやり取りを行う場合は、支払う税金が高額になってしまうことがありますのでご注意ください。
M&Aの手法の違いによって異なる税金のまとめ
個人 | 法人 | ||
M&Aの手法 | 株式譲渡 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
税金の種類 | 所得税と住民税 | 法人税 | 法人税や消費税等 |
税率 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) | 29.74% | 法人税29.74%消費税10% |
課税方式 | 分離課税 | 総合課税 | 総合課税 |
納税者 | 株主 | 法人 | 法人 |
M&Aに関する税制は複雑でわかりにくいものです。
各種税制を検討する場合は、顧問税理士、企業にまつわる税に詳しい専門家に相談すべきでしょう。
株式譲渡
株式を売る場合の税金は、個人と法人で取り扱いが異なる点にご注意ください。
個人だと、譲渡利益に対して約20%の税金が発生します。
譲渡所得を計算する場合は、株式を購入する際にかかった必要経費を差し引くことができます。
法人は、事業が赤字の場合は売却益と相殺できます。
株式の売買では消費税の課税はありません。
買い手側にかかる税金はありません。
注意点は、親族間やグループ会社間での株式譲渡です。
著しく安い価格で売買を行うなど、不適切な売買価格で取引した場合は、税務上の寄付金や贈与とみなされ、多額の納税義務が生じる恐れがあるからです。
事業譲渡
法人の事業譲渡では、法人税と消費税が問題となります。
個人事業の場合は、所得税がかかります。
消費税は、課税資産の売却価格に対して課税されるため、土地などの非課税資産は課税されない点にご注意ください。
事業譲渡対象資産のうち、営業権(のれん)や不動産などを取引する場合、軽減税率などの特例などの特殊な事情によって税率や税額が大きく異なることにご注意ください。
買い手側は、消費税の仕入税額控除が利用できます。
しかし、非課税売上が多い企業の場合は、仕入税額が少なくなるため、税額が高くなることがあります。
合併、分割、交換・移転による組織再編
こちらは、会社法による組織再編の際の合併、分割、交換・移転です。
税法所定の適格要件を満たすかどうかが税額に大きな影響を与えます。
会社法の組織再編では、資産・負債の移転を時価ではなく、簿価で行う必要があります。
簿価で評価すると評価損益が計上されないため、課税が生じないといった特例「税制適格組織再編」が適用できます。
課税が生じない税法の適格要件は細かく定められているため、顧問税理士や税に詳しい専門家に相談しなければならないでしょう。
組織再編税制の適格要件
完全支配関係 | 関係の継続金銭等不交付 |
支配関係 | 関係の継続金銭等不交付従業員の引継ぎ事業の継続 |
共同事業 | 金銭等不交付従業員の引継ぎ事業の継続事業の関連性次のいずれか(事業規模5倍以内、特定役員就任)株式継続保有 |
スピンオフ | 新設金銭等不交付案分型継続非支配事業移転事業継続中枢継続 |
まとめ
最後は、記事の内容を1分で振り返ることができるようなまとめパートです。次のような内容を書いてください。
- この記事の内容やポイントを3〜5つピックアップして箇条書きにしてください
- 執筆者から読者への締めのメッセージをお願いします(文字数は任意)
この記事では、「M&A手法とは?」といったテーマで、M&Aの細かい分類と課せられる税金についての注意点を解説しました。
大企業だけではなく、中小企業や個人事業主でも事業拡大目的の他、高齢化による後継者の問題が増えてきています。
日本ではあまりなじみのない「M&A(企業の合併や買収)」も、2000年代以降は多くの事例が公表されるようになってきたことから、経営問題解決の一助として活用されています。
この記事では、M&A実施にあたって重要となる下記の問題についてまとめましたので参考にしていただければ幸いです。