事業売却時にかかる税金と節税対策について解説

事業売却にかかる税金

事業売却は企業の戦略的な選択肢の一つであり、多くの経営者が事業の再編や経営資源の集中のために検討する重要な手段です。

しかし、事業売却には多くの法的・財務的な要素が絡み、その中でも特に税金の問題は避けて通れません。

適切な税務対策を講じないと、売却益に対する重い税負担が経営を圧迫する可能性があります。

本記事では、事業売却時にかかる税金の種類と、それに対する効果的な節税対策について詳しく解説します。

事業売却を検討している方は、この記事を参考にして、税務リスクを最小限に抑えたスムーズな売却を実現しましょう。

目次

【売却側】事業売却でかかる税金

事業売却を行う際、売却側にはさまざまな税金が課されます。

これらの税金を理解し、適切に対応することで、事業売却のプロセスを円滑に進めることができます。

以下では、主要な税金について詳細に解説します。

法人税・事業税・地方法人税・法人住民税

事業売却によって得られる収益には、法人税が課されます。法人税の計算基礎となるのは、事業売却によって得た譲渡益です。譲渡益は売却価格から譲渡資産の簿価を差し引いた金額となります。

譲渡益がプラスの場合、その金額に対して法人税が課されますが、マイナスの場合は法人税が発生しません。

さらに、事業売却に伴う収益には法人事業税、地方法人税、法人住民税も課されます。これらの税金は、法人税と同様に譲渡益を基礎として計算されます。

法人事業税は地方自治体によって異なる税率が適用され、法人住民税は法人税の一部として計算されることが一般的です。

地方法人税は国が徴収し、地方自治体に再分配される税金であり、法人税の一部として計算されます。

消費税

事業売却には消費税も課されます。消費税は、売却される資産に対して課税されます。

消費税が課される資産には、有形固定資産(例えば建物や設備)、無形固定資産(例えば特許権や商標権)、棚卸資産(在庫品)などが含まれます。

ただし、土地や有価証券、債権などの資産には消費税は課されません。

消費税は売却側が負担するものではなく、買手から徴収し、税務署に納付する仕組みです。

そのため、売却価格に消費税分を上乗せして請求し、買手から支払われた消費税を税務署に納付します。

事業売却に際しては、この消費税の処理を適切に行うことが重要です。

償却資産税・固定資産税・都市計画税

事業売却に伴う税金として、償却資産税、固定資産税、都市計画税も重要です。これらの税金は主に不動産や設備に対して課されます。

償却資産税は、事業用の償却資産(建物や機械設備など)に対して課される税金です。

毎年、償却資産の評価額に基づいて税額が決定され、自治体に納付します。事業売却の際には、売却時点までの償却資産税を清算する必要があります。

固定資産税は、不動産(建物や土地)に対して課される税金です。

固定資産税は毎年の固定資産の評価額に基づいて計算され、自治体に納付されます。

事業売却に際しては、売却時点までの固定資産税を清算しなければなりません。

都市計画税は、都市計画区域内に所在する土地や建物に対して課される税金です。

都市計画税も固定資産税と同様に、毎年の固定資産の評価額に基づいて計算され、自治体に納付されます。事業売却の際には、都市計画税も売却時点までの分を清算する必要があります。

これらの税金は、売却前に適切に評価し、清算することが求められます。

特に、不動産や設備が多い事業の場合、これらの税金が大きな負担となることがあるため、売却前に詳細な評価と計算を行い、適切な対応策を講じることが重要です。

【買収側】事業売却でかかる税金

事業売却において、買収側にもさまざまな税金が課されます。

これらの税金を理解し、適切に対応することで、買収プロセスをスムーズに進めることができます。以下では、主要な税金について詳細に解説します。

法人税・事業税・地方法人税・法人住民税

買収側では、法人税やその他の法人関連税が直接的に課されることはないものの、買収後に得られる収益や利益に対して法人税が課されることを考慮する必要があります。

買収後に事業が成長し、利益が増加すれば、その分法人税も増えることになります。

また、買収によって得られる資産や負債も、事業全体の財務状況に影響を与えます。

法人事業税、地方法人税、法人住民税も同様に、買収後の事業運営において課税される税金です。

これらの税金は、事業の所在地や活動内容によって異なる税率が適用されます。

特に事業拡大や新しい市場への参入を考えている場合、これらの税金を事前に把握し、適切な対策を講じることが重要です。

消費税

消費税は、買収側にとって重要な税金の一つです。事業売却においては、売却される資産の多くが消費税の課税対象となります。

具体的には、有形固定資産(例えば建物や設備)、無形固定資産(例えば特許権や商標権)、棚卸資産(在庫品)などが該当します。ただし、土地や有価証券、債権などの資産には消費税は課されません。

買収側は、これらの資産に対する消費税を売却側に支払う必要があります。

消費税の納付は売却側が行うため、買収側はその消費税分を売却価格に上乗せして支払う形になります。

消費税の処理を適切に行うことで、後のトラブルを防ぐことができます。

また、買収後の消費税の扱いについても注意が必要です。買収した資産が事業に使用される場合、その消費税は課税仕入れとして控除されることがあります。

消費税の申告と納付は税務署に対して行われるため、正確な記録と報告が求められます。

償却資産税・固定資産税・都市計画税

事業売却に伴い買収側に課される税金として、償却資産税、固定資産税、都市計画税も重要です。

これらの税金は主に不動産や設備に対して課されます。

償却資産税は、事業用の償却資産(建物や機械設備など)に対して課される税金です。

買収側は、これらの資産を取得することで、毎年償却資産税を支払う義務が生じます。償却資産税の額は、各資産の評価額に基づいて計算され、自治体に納付されます。

固定資産税は、不動産(建物や土地)に対して課される税金です。

買収側が事業売却に伴い不動産を取得する場合、その不動産に対して固定資産税が課されます。固定資産税は毎年の評価額に基づいて計算され、自治体に納付されます。

固定資産税の額は、物件の所在地や評価額に応じて異なります。

都市計画税は、都市計画区域内に所在する土地や建物に対して課される税金です。

買収側が都市計画区域内の不動産を取得する場合、その不動産に対して都市計画税が課されます。

都市計画税も固定資産税と同様に、毎年の評価額に基づいて計算され、自治体に納付されます。

これらの税金は、事業売却の計画段階から慎重に評価し、買収後のコストとして織り込んでおくことが重要です。

特に、不動産や設備が多い事業の場合、これらの税金が大きな負担となることがあるため、事前に詳細な評価と計算を行い、適切な対応策を講じることが必要です。

事業売却時の節税対策

事業売却を行う際には、適切な節税対策を講じることで、税負担を軽減することが可能です。

税金は売却益や譲渡資産の種類によって異なるため、事前にしっかりとした計画を立てることが重要です。

以下では、主な節税対策について詳しく説明します。

繰越欠損金の活用

繰越欠損金を活用することも、事業売却における節税対策として有効です。

繰越欠損金とは、過去の赤字を翌年度以降に繰り越して、将来の黒字と相殺できる制度です。

事業売却時に、この繰越欠損金を活用することで、売却益に対する課税を軽減することができます。

例えば、売却対象の事業が過去に赤字を計上しており、その赤字が繰越欠損金として認められている場合、売却益と相殺することが可能です。

これにより、実際の課税所得を減少させ、税負担を軽減することができます。

繰越欠損金の適用には、税務当局の承認が必要な場合もあるため、専門家の助言を受けながら手続きを進めることが推奨されます。

資産の適切な評価

事業売却において、譲渡資産の適切な評価を行うことも重要な節税対策の一つです。

売却対象となる資産には、有形固定資産や無形固定資産、棚卸資産などが含まれます。

これらの資産の評価額を適切に設定することで、譲渡益をコントロールし、税負担を軽減することができます。

特に、有形固定資産や無形固定資産の評価額は、売却価格の算定に直接影響を与えます。

例えば、設備や機械、建物などの有形固定資産については、減価償却の状況を考慮しながら評価を行うことが求められます。

また、特許権や商標権などの無形固定資産についても、将来の収益性を見込んだ評価を行うことが重要です。

さらに、資産評価の際には、税務上の減価償却方法や耐用年数を適切に設定することも考慮する必要があります。

これにより、売却益を適切に調整し、税負担を最小限に抑えることが可能です。

節税対策を実施する際には、税務の専門家やM&Aアドバイザーと密に連携し、法令に基づいた適切な手続きを進めることが不可欠です。

事前に綿密な計画を立て、適切な対策を講じることで、事業売却を成功に導くとともに、税負担を軽減することができます。

まとめ

この記事では、事業売却時にかかる税金とその節税対策について解説しました。以下に、本記事の内容やポイントをまとめます。

  • 売却益に対する税金として法人税、事業税、地方法人税、法人住民税が課される。
  • 譲渡資産に対しては消費税がかかり、その扱いと納付方法に注意が必要。
  • 償却資産税、固定資産税、都市計画税など特定の資産に対する税金の理解が重要。
  • 節税対策として、繰越欠損金の活用、資産の適切な評価が有効。

事業売却を成功させるためには、適切な税務対策が不可欠です。この記事を参考に、専門家の助言を受けながら慎重に計画を立て、税務リスクを最小限に抑えた売却を実現してください。

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