社長が引退する年齢とその準備について徹底解説
会社経営をしている方は、いずれ訪れる引退の時期についてお悩みの方も多いのではないでしょうか。
日本全体の高齢化が進む中で、会社経営者の高齢化も同時に進んでいます。
社長の引退は、会社の存続に関わる重大な決断です。
経営手法の引継ぎが失敗すれば会社の存続にも大きく関わるため、細心の注意が必要な重要なプロジェクトとなります。
この記事では、引退の時期について悩みを抱えている社長に向けて、引退についての考え方や、具体的な準備についてまとめました。
ぜひ、最後までご覧ください。
社長の引退年齢
社長の引退年齢は概ね60代中頃と推測されます。
まず、中小企業庁が発表している2023年版「中小企業白書」第2部-第2章のデータを引用して日本国内の経営者の年齢について解説を進めていきます。
2015年の調査において、経営者の年齢層のグラフは、65~69歳でピークの山を形成していました。
2022年の同調査では、グラフの山が50~74歳と分散した形になっています。
2015~2022年にかけてグラフの形が変わった要因として考えられることは団塊世代の引退です。
どの次期においても、グラフにおける70歳以上の経営者の分布は少ないことから、多くの経営者は60代中頃を目途に引退することが多いと言えるのではないでしょうか。
社長、経営者の高齢化は進んでいる
東京商工リサーチの調査によると、2022年の社長の平均年齢は、63.02歳と過去最高となりました。
日本国内全体の高齢化の影響も伴って、社長の年代構成比の調査では、60歳以上の割合が60%を越えました。
社長の高齢化傾向は今後も続くと考えられており、経営者の高齢化によって起こる後継者不足の問題なども深刻化しています。
引退の準備は早いうちから行うことが大切
社長を引退する場合、早いうちから計画的に準備を行っていくことをオススメします。
ここからはその理由について、詳しく解説していきます。
社長の年齢が高いほど収益性が低下するデータがある
前述の東京商工リサーチの調査において、社長が高齢なほど減収企業率が上昇しているというデータが掲載されました。
直近決算の状況において、増収と回答した割合は社長が30代以下の企業で59.35%でした。
一方、社長が70代以上で増収と回答した企業は42.9%と全年代で最も低く、社長が高齢化するほど増収率が下がる傾向となっています。
さらに、決算状況が赤字や連続赤字と回答していた企業において、社長の年齢を確認すると、70代が最も多く、社長の年齢が上がるにつれて業績が悪化していることが示唆されます。
健康リスクが高まっていく
社長が高齢であることのリスクとして、健康面の問題も挙げられます。
人間誰しも年齢が上がるにつれて細かな身体の不調が現れるものです。
役職についたまま、体調不良を起こした場合、重要な意志決定や経営に関する引継ぎ事項を満足に行えない可能性が高くなります。
このことからも、健康面も問題なく、体力的にも余裕があるうちから引退に備えた準備を進めておくことが重要です。
後継者を見つけるのに時間を要する
会社の後継者を見つけるというのは容易ではありません。
社内の役職者から後継者候補を選び、育成していくには数年単位の時間を要する可能性が高いです。
思いのほか育成に時間を要したり、社長が親族に経営を託すことを考えていても、当人にその気が無い場合も十分に考えられます。
多くの経営者が60代中頃を目途に引退する傾向を鑑みると、60代になる前後から後継者の選定を進めておくと良いのではないでしょうか。
社内外に向けての準備に時間を要する
社長を退くということは、社内外へ多くの影響を与えます。
お世話になった取引先への連絡や、引退後の社内の体制整備など様々な調整業務が発生します。
後継者を見つけるのと同様に調整業務には多くの時間を要するため、準備期間はできるだけ長く確保するようにしましょう。
引退前の具体的な準備について
社長が引退する際、具体的にどのような準備を行えばよいのでしょうか。
代表的な準備内容について詳しく解説していきます。
引退のタイミングを決める
まずは、引退のタイミングを検討することが最重要となります。
会社の状況、後継者の問題や、取引先・社内の調整など多角的に現状を判断し引退時期を決定しましょう。
後継者選定、M&Aなど、会社の今後の方針を定める
次に行うことは後継者の選定をはじめとした会社の方針決定です。
会社経営を誰かに引き継ぐ場合、後継者候補がすぐに見つかれば、育成期間を設けてスムーズな引継ぎへの移行が行えます。
しかし、現在の日本では会社の後継者不足が深刻な問題となっています。
万が一後継者が見つからない場合、M&Aなども視野に入れることが必要です。
ただし、M&Aにはリスクも多く存在します。
例えば、会社売却の噂が社内に漏れた場合は、退職を検討する社員が増える可能性があります。
また、会社売却後の新たな経営者が事業をうまく継続できるか不明なため、会社が数年後存続しているという保証はありません。
後継者が不在で、会社の売り先も見つからない場合は、廃業も視野に入れる必要も出てきます。
しかし、従業員の雇用を考えると良い選択とは言えないため、出来るだけ避けるべき決断と言えるでしょう。
後継者の育成
本記事では、後継者が決まっている状況と仮定して、後継者の育成について解説を行います。
後継者が決まっている場合には、早いうちから役職を与えて、各部署の概況などを理解させる必要があります。
早いうちに後継者候補が社員からの信頼を獲得できれば、スムーズに引退の準備を進めることができ、社内からの不満が現れる可能性も下げられます。
引退の直前には後継者候補を副社長などのポストに据えて、社長と行動を共にすることで経営者としての実務経験を与えることも大切です。
引退後はどうする?
社長を退いた後も、生活は続いていきます。
引退後の生活の充実度は、余生を送る上で非常に重要な要素です。
今回は、代表的なケースである2点を解説します。
会長職や、取締役として会社を見守る
引退後も会社の経営に携わる場合は会長職として在職するケースが一般的です。
会長としての業務範囲は企業によって異なります。
アドバイスのみを行う場合もあれば、引き続き実務を行う形で会社に残る方もいます。
ただし、社長時代と同様の実務をこなしている場合、後継者の育成を阻害する可能性があるため、注意が必要です。
会社から離れる場合
経営から完全に離れる場合、スキルを活かして新たな働き口を探すのも手段の1つです。
高齢者を積極的に雇用する企業も増えてきているため、経営経験の豊富な方は比較的容易に働き口を見つけることができる可能性も高いです。
また、老後の貯蓄が十分な場合は会社経営から完全に離れ、余生を過ごす方法も考えられます。
新たな趣味などの活動に没頭することで、生活を充実させることが出来るでしょう。
引退についての相談先
実際に引退を検討した場合、相談先は非常に重要です。
会社を後継者に渡す、M&Aを検討するなど、複数の選択肢を持つ際には、専門家への相談を行うことでより適切な回答を得られるケースもあります。
代表的な相談先とその特徴について解説を行います。
商工会議所
全国の商工会議所は経営者の相談窓口を設けています。
士業の方を紹介してもらい、アドバイスを受けられるため、はじめの相談先としては有力な候補になります。
よろず支援拠点
各都道府県に設置されているよろず支援拠点も中小企業、小規模事業者の経営の悩みに向き合う機関です。
経営に関することであれば資金調達はじめ、販路拡大についてなど、どのような内容でも相談が可能な点が特徴です。
M&A仲介企業などの民間企業
引退する際に事業の売却を検討している場合は、M&Aを仲介する企業が選択肢の1つになります。
企業価値の計算から、売却候補先の選定まで複雑な業務を専門的に扱っており、企業の売却時における手厚いサポートを受けることができます。
まとめ
社長の高齢化が進み、後継者不足が深刻となっている中では、自身の引退への準備を早期から行っていくことが非常に重要となっています。
会社の引継ぎに関する業務は時間がかかり、複雑でうまく進行しない可能性も十分に考えられます。
事業を成長させていくことはもちろんですが、自身の引退後も会社を存続させるためにも、引退のタイミングを慎重に見極めながら経営を行いましょう。