息子に会社を継がせる際のメリット・デメリットと具体的な手続き

息子に会社を継がせる会議

「息子に会社を継がせたいけれど、どんな準備が必要なのだろう」「メリットとデメリットをしっかり理解しておきたい」

このような経営者の皆様の悩みは当然のことです。

親族内承継には、経営理念の継承のしやすさや税制優遇といったメリットがある一方で、後継者の適性や親族間のトラブルなど、考慮すべき課題もあります。

この記事では、息子への事業承継における重要なポイントを、メリット・デメリット・具体的な手続きの3つの観点から解説します。

目次

息子に会社を跡継ぎさせる親族内承継とは

親族内承継とは、経営者が息子などの親族に会社の経営権を引き継ぐ方法です。

このような承継方法が選ばれる理由は、企業の伝統や価値観を守りやすい点にあります。2023年に帝国データバンクが実施した調査によると、全体の約33.1%の企業が親族内承継を選択しているとのことです。

たとえば、創業者の想いや経営理念を受け継ぎながら、従業員や取引先との信頼関係も維持できます。ただし、後継者の育成や株式の承継など、さまざまな準備が必要となるため、早めの計画が大切です。

親族内承継は、相続や贈与、株式売買など複数の方法で実施できます。円滑な事業承継のためには、税理士などの専門家に相談しながら、計画的に進めることがポイントとなります。

親族内継承の5つのメリット

親族内承継には、経営理念の継承や信頼関係の維持など、事業の安定的な発展につながる大きな利点があります。それでは、具体的なメリットを見ていきましょう。

経営理念や企業文化を継承しやすい

親族内承継では、創業者の想いや価値観を自然な形で引き継げます。

その理由は、後継者が幼少期から会社の方針や経営理念に触れて育つためです。たとえば、「お客様第一」という価値観や、「地域に根差したサービス」といった企業文化を、日常生活の中で体験的に学べます。

また、従業員からも「創業者の精神を受け継ぐ人物」として認識されやすく、スムーズな経営移行が期待できます。このように、親族内承継では企業のDNAを途切れることなく受け継げるのです。

従業員や取引先から信頼を確保しやすい

親族が会社を継ぐことで、関係者に大きな安心感を与えられます。

なぜなら、突然の経営方針の変更や雇用不安が少なく、長年築いてきた信頼関係を維持しやすいためです。とくに、従業員にとっては働き方や待遇が急激に変わる心配が少なく、取引先との関係も安定的に続けられます。

たとえば、地域密着型の企業では、代々続く経営者一族という観点から信頼を得やすい傾向にあります。ただし、この信頼を維持するには、後継者自身の実績や能力も重要となる点には注意しましょう。

後継者を早期に選定し育成できる

親族内承継では、計画的な後継者教育を実現できます。

これは、経営者が子どもの頃から、将来の承継を見据えた育成プランを立てられるためです。たとえば、大学で経営学を学ばせたり、他社での実務経験を積ませたりと、段階的な成長機会を設けることが可能です。

さらに、現経営者のもとで実践的なトレーニングを行えるため、経営ノウハウを着実に習得できます。このような長期的な視点での人材育成が、円滑な事業承継につながります。

資産承継が柔軟に行える

親族内承継では、会社の資産をさまざまな方法で引き継げます。

これは、相続や贈与、株式売買など、複数の選択肢から最適な方法を選べるためです。具体的には、後継者の資金力に応じて株式を分割して譲渡したり、計画的な贈与で税負担を抑えたりすることが可能です。

ただし、適切な方法は企業の状況によって異なります。専門家に相談しながら、自社に最適な承継方法を選択することが重要です。

事業承継税制を活用できる

親族内承継では、税制優遇措置を活用して税負担を軽減できます。

この制度は、一定の条件のもと、相続税や贈与税の納税を猶予・免除するものです。後継者が株式の贈与を受ける際、事業承継税制を利用することで数千万円規模の税負担を抑えられる場合があります。

ただし、雇用維持などの要件を満たす必要があり、手続きも複雑です。税理士などの専門家に相談しながら、慎重に検討を進めることをおすすめします。

親族内継承の4つのデメリット

親族内承継には課題やリスクも存在します。ここでは、円滑な事業承継を妨げる可能性がある4つの重要な問題点について解説します。

資質や意欲を持つ適任者がいない場合がある

親族内に経営者として相応しい人材がいるとは限りません。その理由は、経営能力や意欲は必ずしも血縁関係とは結びつかないためです。

このような場合、早めに外部の専門家による育成支援を検討したり、社内で体系的な教育プログラムを実施したりすることが重要です。適切な育成計画があれば、後継者の成長を支援できます。

親族間のトラブルが生じる可能性がある

株式や経営権の継承をめぐって、親族間で対立が起こることがあります。とくに、複数の兄弟姉妹がいる場合に、会社の資産分配や役職の割り当てで不公平感が生まれると起こりやすくなります。

そのため、事前に公正証書遺言を作成するなど、明確なルール作りが大切です。専門知識を持った第三者を交えた話し合いで、親族全員が納得できる承継計画を立てることがポイントとなります。

個人保証で問題が発生する場合がある

中小企業特有の課題として、借入金の個人保証の引継ぎがあげられます。多くの中小企業では、経営者が融資の個人保証人となっているため、承継時に後継者への保証の切り替えが必要となります。

しかし、金融機関が後継者の信用力を懸念し、保証の引継ぎが難航することがあるのです。そこで、事業承継前から金融機関と十分な協議を行い、保証債務の軽減や保証人の変更について相談することが重要です。財務の透明性を向上させることやキャッシュフローの健全性を確保するなどの事前の対策で、後継者の負担を軽減できます。

新たな戦略や改革が進めにくい場合がある

親族内承継では、伝統を守ることを優先するあまり、時代に応じた変革が進みにくくなります。その理由は、「先代のやり方」を重視しすぎるあまり、市場環境の変化への対応が遅れがちとなるためです。

たとえば、オンラインサービスの導入やデジタル化投資などの判断が遅れ、競争力が低下するケースがあります。しかし、伝統と革新を両立させることは十分に可能です。後継者の新しいアイデアを活かしつつ、これまで培ってきた企業の強みを守る—このバランスの取れた経営が、事業の持続的な発展につながります。

親族に会社を継がせる際の手続き

事業承継を成功させるには、計画的な準備と適切な手順が不可欠です。ここでは、スムーズな承継に必要な6つのステップを詳しく解説します。

1.後継者の選定と育成

親族内承継の第一歩は、適任の後継者を見つけ、育成することです。この段階では、経営能力や意欲を持つ人材を見極め、計画的な教育を行います。

たとえば、経営の基礎知識を学ぶ研修や、実務経験を積むOJTなどを実施します。早期から育成をスタートし、現経営者のノウハウを確実に引き継ぐことが重要です。

2.事業承継計画の策定

円滑な承継には、具体的な計画と目標設定が欠かせません。計画には、承継時期、段取り、育成プログラムなど、詳細なスケジュールを盛り込みます。

また、従業員や取引先への影響も考慮し、実現可能な目標を立てることがポイントです。専門家の助言を得ながら、着実に実行できる計画を作成しましょう。

3.株式や資産の承継準備

会社の株式や資産を後継者へスムーズに引き継ぐ準備が必要です。相続、贈与、売買など、さまざまな方法から最適な手段を選択します。

不動産や知的財産など、複雑な資産がある場合は、税理士や弁護士に相談することをおすすめします。早めの準備で、税負担を抑えた効率的な承継が可能となるのです。

4.関係者への周知と調整

事業承継の成功には、社内外の関係者の理解と協力が欠かせません。従業員には社内集会で丁寧に説明し、取引先には個別に訪問して理解を求めます。

また、金融機関とも早めに協議を始め、必要な調整を行います。誠実なコミュニケーションで、事業承継をスムーズに実現しましょう。

5.法的・税務的手続きの実施

事業承継には、さまざまな法的・税務的な手続きが必要となります。株式譲渡や役員変更の登記を行い、事業承継税制の申請も検討します。

これらの手続きは複雑なため、専門家のサポートを受けることが重要です。正確な手続きで、将来のトラブルを防ぎましょう。

6.承継後のフォローアップ

事業承継は、手続きの完了がゴールではありません。新体制への移行期間は、現経営者が顧問として支援しつつ、後継者の自主性も尊重します。

たとえば、月次での経営会議を設けて業績をチェックしたり、社外の経営アドバイザーに相談できる体制を整えたりすることが効果的です。こうした継続的なサポートが、後継者の成長と会社の持続的な発展につながります。

まとめ

親族内承継を成功させるためには、メリット・デメリットを十分に理解し、計画的な準備を進めることが重要です。

とくに、後継者の育成や株式承継の準備は、早めに取り掛かることをおすすめします。また、親族間の合意形成や社内外の関係者との調整にも十分な時間を確保しましょう。

専門家のサポートを受けながら、着実に準備を進めることで、円滑な事業承継が実現できます。ぜひ、この記事を参考に、自社に合った承継計画を立ててください。

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