後継者のいない会社を個人が買う方法|メリットやデメリットを解説
後継者のいない会社を個人やサラリーマンでも買収するケースが増加しています。
会社を買収することは、きちんとした「M&A」取引です。
M&Aは、個人でも十分に取引可能で、事業承継や新規起業などにも大いに活用されています。
個人M&Aを実施するにあたっては、メリットとデメリットを十分に理解し、後継者のいない優良会社を探す方法や良い会社の選定ポイントについても知っておくことをおすすめします。
個人でも後継者のいない会社を買うことは可能
個人でも後継者のいない会社を買うことができます。
そして、これは立派なM&A取引です。
買い手側が、個人であっても、後継者のいない会社とはどのような会社なのか、メリットやデメリットなどの知識も必要です。
そこで、下記の項目についてまず最初に確認してみましょう。
- 後継者のいない会社の現状
- 狙うのは小規模の企業
- サラリーマンでも購入可能
後継者のいない会社の現状
少子高齢化が進み、中小企業だけではなく、すでに輝かしい実績を持つ中規模企業であっても人手不足や後継者難、後継者育成などの様々な問題を抱えています。
また、中小企業では、後継者難での倒産件数も2021年は過去9年間で最多件数を記録しており、事業承継問題の解決が急務となっています。
例えば、建設業やサービス業、卸売業、製造業などでの事業承継問題が数多く発生しています。
ところが、黒字経営を続け、財務諸表にどこにも弱点がないような健全な優良企業であっても、後継者不在による倒産の危機を迎えつつあるケースが多く、M&Aを活用した事業継承を考えるようになってきています。
インターネットによるM&Aマッチングサービスも登場し、小規模事業者の登録、仲介手数料の低減等によって、個人でも後継者のいない会社を狙って買収を行うケースが増えています。
狙うのは小規模の企業
後継者のいなくなった企業は、100万円前後でも取引が可能です。
通常M&Aといえば、1,000万円を超えるような取引規模をイメージしてしまいますが、個人でも購入できる小規模企業は、300〜500万円がおおよその相場です。
低価格帯の小規模企業で代表的なものは、従業員の少ない個人経営の店舗です。
例えば、
- 飲食店
- 美容室
- リサイクルショップ
などです。
また、近年増えているネット企業も人気があります。
すでに安定した集客ができていて、一定の収益が出ているWebサイトの場合なら100万円未満でも購入可能です。
サラリーマンでも購入可能
買い手の話をすると、個人といえば、同じような中小企業経営者や個人事業主ではなく、一般企業でバリバリと働いているサラリーマンでも企業の買収が可能です。
後継者のいない会社を事業継承すれば、異業種のサラリーマンであっても、希望の業種や未経験の業種などにいきなりチャレンジすることができます。
個人M&Aの場合は、未経験者の事業継承の実例も豊富で、憧れの仕事にもチャレンジできるといった夢を叶える手段にもなりつつあります。
個人で後継者のいない会社を買うメリット
個人で後継者のいない会社を買う場合の買い手と売り手の両方のメリットについてまとめました。
買い手の場合
すでに成功しているので開業がスピーディー
すでに事業を始められる環境と組織がそろっています。
開業や人材育成などのリスクがなく、買収後も安定した事業経営が継続できる可能性が高いといえます。
取引先や顧客もそのまま引き継げる
ビジネスには、ノウハウ、取引先、顧客などが必要です。
後継者のいなくなった会社でも、すでに蓄積されたノウハウを元に、既存の取引先や顧客リストをしっかり引き継いで事業をスタートさせることができます。
売り手の場合
会社の存続と既存従業員の雇用継続
会社はそのまま存続できます。
資産の処分も不要で、そのまま従業員の雇用も継続できます。
現金化による借入返済や生活費への充填
会社の売却によって、現金化が可能となり、その現金で借り入れの完済、経営者引退後の生活費などに使うことができます。
また、身軽になって、改めて新規事業を手掛けるなど、売却後はオーナーが自由に行動できるようになります。
個人で後継者のいない会社を買うデメリット
個人で後継者のいない会社を買う場合の買い手側と売り手側の両方のデメリットについてまとめました。
買い手の場合
環境変化による人材流出
経営者が変わると、労働環境や待遇が大幅に変わってしまうことがあります。
変化を受け入れられない従業員も多いので、優秀な人材が他社へと流れる恐れがあります。
ノウハウの流出
大量の社員が辞めてしまうと、ノウハウも競合他社へ流出する恐れがあります。
ノウハウは長年の営業実績によって積み上げられてきたものです。その企業独自のノウハウもありますので、競合他社へ流れてしまうと買収後に事業が継続できない可能性があります。
簿外債務などの発覚
個人でのデューデリジェンスが不十分であった場合は、買収後に隠れた負債が発覚することがあります。
例えば、簿外債務です。簿外債務は貸借対照表に計上されておらず、後から発覚すれば買収後の事業運営を苦しいものにさせてしまうでしょう。
売り手の場合
企業価値の判断が難しい
個人M&Aでは、企業価値の算定に際し、買い手側が主導権を握ることが多くなります。
そのため、売り手側が期待した企業価値よりも低い買収価格が算定されることがあります。
買い手側の都合で妥協せざるを得ないことがある
売り手側は、買い手を探す必要があります。
M&Aマッチングサイトなどの登場によって、昔よりも事業承継などで会社を買収する個人が増えていますが、それでもタイミングよく理想の買い手に出会えるわけではありません。
場合によっては買い手側の都合で、低い買収額で手放さざるを得ない場合があります。
期限の存在
会社の売却を考えている場合は、契約の更新期限等が迫っていることがあります。
やむを得ない事情で厳しい期限を要求されているケースもありますので、交渉も妥協せざるを得ないでしょう。
また、買収交渉が長引くと、取引先にも良い印象を与えなくなってしまいます。
後継者のいない会社を探す方法
現在も後継者がいないと悩んでいる中小企業や個人事業主は増加しています。
安全に後継者のいない会社を探すための信頼できる方法についてご紹介します。
- M&Aマッチングサイト
- M&A仲介業者
- 事業引継ぎ支援センター
M&Aマッチングサイト
M&Aマッチングサイトには、数多くの売り手企業と買い手企業が登録されています。
業種、予算、地域など、様々な条件を元に希望に合った企業を探すことができます。
M&Aマッチングサイトはネットサービスですが、M&Aの専門家のサポートが受けられるサイトも存在します。
サービス料金が低額なので、企業だけではなく、個人の利用者が多いのが特徴です。
M&A仲介業者
M&Aの仲介を専門とする業者も存在します。
しかし、譲受・譲渡の価格が1,000万円未満の小規模企業の個人案件については、あまり積極的ではありません。
金融機関や保険会社でもファイナンシャルアドバイザーによるM&A仲介業務を行う場合があります。
事業引継ぎ支援センター
売り手側が利用するなら公的機関で信頼性の高い「事業引継ぎ支援センター」がおすすめです。
特に中小企業や小規模事業者に向けて、事業譲渡支援を行っています。
相談料は無料で、中小企業診断士のサポートも受けられます。
後継者のいない会社の選定ポイント
買い手側が後継者のいない会社を選定するにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか?
いくつかのポイントに絞って解説します。
- 企業価値はどうやって決まるのかを知ること
- 自ら引き継ぐことができる業務内容を選ぶ
- 予算の問題
- 経営状況を立て直せるかどうか?
企業価値はどうやって決まるのかを知ること
買い手側が後継者のいない企業の買収を検討する際に知っておくべきことがあります。
それは、「企業価値の算定方法」です。
企業価値を評価し、金銭的な価値で算定するには、「企業価値評価」の知識が必要です。
そして、
- 評価の時価純資産法
- DCF法(将来的な収益価値の見積もり)
などの判断指標を元に適正な価格を算定します。
しかしながら、会社の価格は、これらの基準を使っても正確に判断することはできません。
これらは、あくまでも会社の価値判断の目安です。
その理由は、詳しく内容を調査すると、収益モデルや経営上の問題などが各企業ごとにかなり異なり、同じような企業だからといっても、同じ評価になるわけではないからです。
自ら引き継ぐことができる業務内容を選ぶ
後継者のいない会社を引き受ける場合は、すでに前任者が存在しないため、自ら切り開くことができるかどうかが買収後も事業を継続できるポイントとなるでしょう。
そのため、その会社や事業が好きで、仕事がとても面白い、などといった強い情熱やある程度の業界での経験や実績が必要です。
予算の問題
後継者のいない会社を買収する際にも予算が問題です。
無理のない予算は当然ですが、会社の規模や同業種での平均的な会社の価格を元に、買収価格が高すぎないように注意しなければなりません。
買収額の高騰を防ぐには、予算の上限の設定が重要です。
また、予算を決めると、過去の買収事例などを元に、その価格帯ならどの程度の規模の会社が買えるのかもわかるようになるでしょう。
経営状況を立て直せるかどうか?
すでに後継者のいない会社ですから、売上や業績が頭打ちになっている恐れがあります。
経営状況を立て直し、自分自身が切り盛りする必要があるため、経営状況を正しく把握し、業績がよくないなら、買収後にどのように経営を立て直すかの綿密なプランが必要でしょう。
まとめ
少子高齢化によって後継者がいなくなって困っている会社が増えています。
しかし、そういった会社の経営者と縁のなかった個人でも、後継者のいない会社を買収して起業するケースも増えています。
この記事では、後継者のいない会社を個人が買う方法についての様々な注意点について丁寧にご説明しました。
- 個人でも後継者のいない会社を買うことは可能
- 個人で後継者のいない会社を買うメリットとデメリット
- 後継者のいない会社を探す方法と選定ポイント
これらの記事内容をよく読めば、後継者のいない優良企業を探して、個人でも事業承継や新規起業がしやすくなりますので、ぜひご活用ください。