スクイーズアウトのメリットやデメリット、手法を解説!
M&Aの世界にはさまざまなやり方が存在しますが、その中でも特に注目されるのがスクイーズアウトです。
スクイーズアウトとはどういったものなのか、そしてメリットや注意点は何なのか興味を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事ではM&A初心者から経験者まで、スクイーズアウトの全貌をわかりやすく解説します。
メリットだけでなく注意点や実際の適切なやり方も紹介することで、スクイーズアウトを上手く活用するためのヒントも紹介します。
この記事を読むことで、M&Aの戦略的な選択としてのスクイーズアウトの理解が一層深まることは間違いないでしょう。
ビジネスの現場での活用や、次の一手を考える際の参考にしてみてください。
スクイーズアウトとは?
スクイーズアウトとは株式会社内で大株主と少数の株主の意見が対立する際に、少数の株主から株式を強引に買い取ることで大株主の意見を通しやすくすることをいいます。
こちらでは、スクイーズアウトの目的について主要なものをご紹介します。
分散した株式を集約する
株式が相続や取引先間の取引の結果として分散することは、多くの会社で珍しい事態ではありません。
このような状況では株主管理に関わるコストが増大し、追跡不能な株主の出現などのリスクも増えます。
分散した株式を管理することは会社にとって負担となる可能性が高まって、スクイーズアウトが役立ちます。
これを実行することで、会社は株式を効率的に一箇所に集めることができるでしょう。
意思決定スピードの向上
企業内での大切な決定事項は多くの場合、株主総会での決議によって決まります。
しかし多数の少数の株主が反対意見を持つ場合、意思決定に必要な時間やコストが増加する可能性があります。
スクイーズアウトを用いてこのような株主を取り除くことで、会社の決議がスムーズに進行し、経営の迅速化が期待できるでしょう。
管理コストの削減
少数の株主が増加するとそれに伴う管理コストも上昇し、これには株主総会の通知、会場の設定、株の配当にかかるコストなどが含まれます。
スクイーズアウトによってこれらの株主を追い出すことで、書面による決議が可能になるなど、管理コストを削減することが可能です。
さらに少数の株主の存在は訴訟リスクの増加をもたらす可能性があるため、その点からもスクイーズアウトが有効な手段となるでしょう。
税制上のメリットのため
スクイーズアウトを活用するとM&Aの際に買収先を完全子会社として取り込むことができるので、これにより連結納税制度の利点を享受することができます。
この制度は親会社と子会社の利益や損失を合算して税金を計算するもので、子会社が赤字の場合でも、親会社の利益を補填することが可能となります。
そのためスクイーズアウトは、税制上の利益を最大化する手段として使用されることが少なくありません。
スクイーズアウトのメリット
スクイーズアウトは中小企業のM&Aなどでよく用いられますが、具体的にはどんなメリットがあるのでしょうか。
こちらでは、スクイーズアウトのメリットについて主なポイントをまとめました。
M&A時の減額要因の取り除く
M&Aを進めるとき、存在する少数の株主のために買収価格の減額リスクが高まります。
株主としての権利があるため多くのコストと手間が発生しますが、このような問題を避けるためスクイーズアウトを行って少数の株主を追い出すのが良策でしょう。
事務手続きの削減
少数の株主の存在は、年次の事務手続きを複雑にします。
しかしスクイーズアウトにより全ての株主が1人となれば、煩雑な手続きが大幅に減少して業務効率が向上します。
株式の分散防止
少数の株主が存在すると、将来的に株式がさらに分散するリスクがあります。
相続や突然の株主の出現など未予測の事態が考えられるので、スクイーズアウトを実施することでこのようなリスクを効果的に追い出すことができます。
訴訟リスクの抑止
少数の株主が存在する限り、株主代表訴訟のリスクを考慮しなければなりません。
このリスクは企業にとって大きな懸念となるため、スクイーズアウトで少数の株主を追い出すことで訴訟リスクを大幅に抑制することが可能になります。
税制上のメリットが大きい
親会社が法人である場合、少数の株主をスクイーズアウトして親子関係を100%にすることで、連結納税制度の利用が可能になります。
これは税制上非常に大きなメリットとなり、企業の財務効率を向上させることができます。
スクイーズアウトの注意点
スクイーズアウトのメリットはさまざまありますが、合わせて気を付けないといけない注意点も存在します。
こちらでは、スクイーズアウトの注意点について以下にまとめました。
可能な会社が限定的
全ての企業がスクイーズアウトを実施できるわけではありません。
一定数の株式の保有や特定の株主の同意が絶対的な条件となるため、いくつかの場合では少数の株主の追い出しが難しくなる可能性も考えられます。
企業が実施を検討する際には必要条件を十分に確認し、詳細な事前整理が非常に重要です。
対価の交付が負担となる
スクイーズアウトを行う際、株主に対する対価の支払いが必須となります。
企業の財務状態や対象となる少数の株主の数により、この支払いは大きな負担として現れることがあるのです。
したがって実施するにあたり、対価の支払能力とその経済的負担をきちんと事前に考慮することが必要不可欠となるでしょう。
買取価格を巡って紛争に発展
スクイーズアウトの際、設定する買取価格に関する紛争の可能性が高まります。一部の株主が価格に納得できない場合、裁判に発展するリスクも無視できません。
このような状況を避けるため適切な価格設定や円滑な交渉が要求されるとともに、紛争のリスクを事前に考慮して準備することが大切です。
スクイーズアウトのやり方
スクイーズアウトには株式等売渡請求制度や株式併合、株式交換、全部取得条項付種類株式の4つのやり方があります。
こちらでは、4つのスクイーズアウトのやり方についてのポイントを解説します。
株式等売渡請求制度
特別支配株主として総議決権の90%以上を有している者が、他の株主からその株式を強引に買い取る株式等売渡請求制度のやり方は短期間での実行が可能です。
ただしこのやり方のハードルとして、90%以上の株を既に保有する必要がある点に注意する必要があるでしょう。
株式併合
株式併合とは、一定の数の株式を統合して再発行するもので、こうすることで端株が生成され会社によって買い取られる形で少数の株主を追い出す方法です。
ただしこの方法を採用するためには、株主総会で3分の2以上の賛成が必要となります。
株式交換
株式交換とは大元の親会社が、子会社の株主へその親会社の株式を新たに交付するやり方になります。
このやり方を使うと子会社の少数の株主を親会社の株主として統合することができ、完全なスクイーズアウトを実現するための追加の手段も存在します。
全部取得条項付種類株式
株主総会の特別決議を経て、強引に特定の株式を取得できるのは全部取得条項付種類株式で全部の株式をこの種類に変更し、その後少数の株主が持つ株を強引に買い取る方法です。
多くの手続きやコストが必要となるため、最近では選ばれる機会が少なくなっています。
スクイーズアウトの事例
こちらでは実務でのスクイーズアウトの事例をいくつか紹介していきます。実際にニュースで聞いた事例もあるかと思うので、一緒に概要を見ていきましょう。
カネボウ
カネボウにおけるスクイーズアウト事例は、評価価格の設定に関する議論で大きく注目されました。
東京地裁ではDCF法を基に価格を決定しましたが、この評価方法は必ずしも絶対的ではないとされています。
事実、レックスやJCOMのような他の事例も参照すると、さまざまな評価方法が存在しているのがわかるでしょう。
LINE・Zホールディングス
ソフトバンクとネイバーが共同で行ったLINEの全株式取得試みはTOBが成功しなかった後、株式併合という手段でスクイーズアウトを果たしました。
この事例は異なる戦略を組み合わせて最終的な目的を達成する方法を示しており、非常に興味深いものになりました。
まとめ
これまで、スクイーズアウトの目的やメリットや注意点、やり方についてポイントを解説をしてきました。
スクイーズアウトは株式の分散防止や事務手続きの削減などメリットも多くありますが、そもそも可能な会社が限定的だったり高額な費用がかかったりするので注意しましょう。
スクイーズアウトはおもに4つのやり方があるのですが、手続きの負担が大きかったり条件のハードルが高いなどの理由で、おもに株式併合が利用されています。
スクイーズアウトを行う上で専門的な知識が都度必要になってくるので、専門家の意見に耳を傾けながら進めた方がスムーズな対処ができるのでおすすめです。