廃業と売却(M&A)の違いとは?メリット・デメリットを徹底解説
事業の将来に悩む経営者が増えています。「後継者がいない」「このまま事業を続けるべきか迷う」など、多くの経営者が事業の出口戦略を模索しているのです。
そんな悩みを解決する選択肢として「廃業」と「売却(M&A)」があります。どちらを選ぶかで、経営者自身や従業員、取引先への影響が大きく変わるのです。
この記事では、廃業と売却それぞれの特徴やメリット・デメリットを徹底的に解説します。さらに、手元に残る資金や従業員の雇用維持など、具体的な比較ポイントもわかりやすく説明していきます。
そもそも廃業と売却(M&A)とは
企業を終える選択肢として「廃業」と「売却(M&A)」という2つの方法があります。それぞれの特徴を理解することで、よりよい判断ができるでしょう。
廃業とは
事業を完全に終了し、会社の法人格を消滅させるのが廃業です。とくに中小企業では、後継者不足や経営難がきっかけとなることが多く見られます。
廃業を選択する理由は、企業によってさまざまです。たとえば、業界の先行きが不透明な場合や、会社の債務整理が必要なときに検討されます。また、経営者の高齢化に伴い、後継者が見つからないことも大きな要因となっています。
ただし、廃業は必ずしもマイナスの選択ではありません。むしろ、経営者にとって新たなステージへの第一歩となる可能性もあるのです。計画的に進めることで、取引先や従業員への影響を最小限に抑えられます。
売却(M&A)とは
事業や経営権を第三者に引き継ぐ手法が売却(M&A)です。これは、企業の価値を活かしながら事業を存続させる方法として注目を集めています。
売却先は、同業他社や異業種の企業、投資ファンドなど、さまざまな選択肢があります。とくに近年は、後継者問題の解決策として、中小企業でもM&Aを活用するケースが増えているのです。
たとえば、老舗の町工場が大手メーカーの傘下に入ることで、技術力は維持したまま、販路の拡大に成功した例もあります。このように、売却は単なる事業の終了ではなく、会社の持続的な成長につながる選択肢となっているのです。
廃業のメリット・デメリット
廃業を選択する際は、さまざまな影響を慎重に検討する必要があります。ここでは、廃業のメリットとデメリットを具体的に解説します。
メリット
廃業には、経営者の負担を軽減できる重要なメリットがあります。主なメリットは以下の3つです。
- 経営負担からの解放
- 日々の資金繰りからの解放
- 従業員管理の負担軽減
- 精神的なプレッシャーからの解放
- 債務の整理が可能
- 適切な清算手続きによる既存債務の整理
- 新たな債務の発生防止
- 計画的な整理による影響の最小化
- 将来的な資産の保全
- 経営者個人の資産保護
- 不採算事業継続による損失の防止
- 早期決断による資産価値の維持
このように、廃業は事業の終了だけでなく、経営者の新たなスタートを支える選択肢となり得るのです。とくに、早期の決断により、より良い形での事業終了が可能になります。
デメリット
廃業に伴う最も大きな課題は、さまざまな関係者への影響です。主なデメリットとして、以下の4つがあげられます。
- 従業員への影響
- 全従業員の解雇が必要
- 生活基盤への直接的な打撃
- 再就職までの期間の不安定さ
- 経済的な損失
- 事業用資産の低価格売却
- 市場価値以下での処分による損失
- 在庫品の処分コスト
- 取引先への影響
- 長年の取引関係の終了
- 地域経済への影響
- 取引先の事業への支障
- 経営者個人への影響
- 連帯保証による個人債務の残存
- 清算後の事務処理負担
- 信用面での影響
このように、廃業は経営者だけでなく、多くの関係者に影響を与える決断となります。そのため、専門家への相談や他の選択肢の検討を含め、慎重な判断が求められるのです。
売却(M&A)のメリット・デメリット
事業の売却(M&A)は、売り手と買い手の双方にさまざまな影響をもたらします。ここでは、それぞれの立場から見たメリットとデメリットを詳しく解説します。
メリット
売却(M&A)の最大のメリットは、事業価値を活かしながら円滑な承継が可能な点です。主なメリットは以下のとおりです。
- 売り手側のメリット
- 事業承継問題の解決
- 後継者不在の課題解決
- 事業の継続的な発展
- 従業員の雇用維持
- 経営者の利点
- 事業資産の現金化
- 経営負担からの解放
- 個人保証の解除可能性
- 事業承継問題の解決
- 買い手側のメリット
- 事業拡大の実現
- 即戦力の人材確保
- 既存顧客基盤の獲得
- 市場シェアの拡大
- 相乗効果の創出
- コスト削減の実現
- 技術やノウハウの獲得
- 新規市場への参入機会
- 事業拡大の実現
このように、売却は双方にとってメリットのある選択肢となります。とくに、事業の継続性を重視する経営者にとって、有効な手段となるでしょう。
デメリット
売却(M&A)には、慎重な検討が必要な課題もあります。主なデメリットとして以下があげられます。
- 売り手側のデメリット
- プロセスの負担
- 適切な買い手の選定
- 複雑な交渉過程
- 時間と費用の発生
- 事業への影響
- 従業員の不安増大
- 取引先との関係変化
- 企業文化の変容
- プロセスの負担
- 買い手側のデメリット
- 統合リスク
- 組織文化の衝突
- 業務プロセスの調整
- 従業員の反発
- 予期せぬリスク
- 簿外債務の発見
- 想定外の費用発生
- シナジー効果の未実現
- 統合リスク
このように、売却にはさまざまな課題が伴うため、専門家のサポートを得ながら、計画的に進めることが重要です。
廃業と売却の比較
廃業と売却(M&A)は、その特徴や影響において大きな違いがあります。ここでは、手元に残る資金、従業員の雇用維持、手続きの手間の3つの観点から比較します。
手元に残る資金
両者で大きく異なるのが、最終的に手元に残る資金の額です。廃業の場合、資産を市場価格よりも低い金額で売却せざるを得ないことが多く、十分な資金を確保できないケースが目立ちます。
一方、売却では事業全体の価値が評価対象となります。たとえば、技術やノウハウ、顧客基盤といった無形資産も価値として認められるため、廃業時よりも多くの資金を得られる可能性が高くなっているのです。
ただし、両方のケースで必要な費用にも注意が必要になります。廃業では清算手続きや従業員への補償費用、売却では仲介手数料などの経費が発生するのです。
従業員の雇用維持
従業員の雇用維持という観点では、売却が優位です。廃業を選択した場合、全従業員の解雇が避けられず、彼らの生活基盤に大きな影響を与えることになります。
しかし、売却では新しいオーナーのもとで事業が継続されるため、多くの場合、従業員の雇用も維持されます。ただし、買い手の事業方針によって、雇用条件が変更される可能性もあるため、事前の確認が重要です。
長年共に働いてきた従業員への配慮を重視する経営者にとって、売却は有力な選択肢となり得るのです。
手続きの手間
手続きの複雑さは、廃業と売却で異なる特徴を持っています。廃業の場合、解散や清算など法定の手続きが必要となりますが、比較的シンプルに進められます。
一方、売却では買い手の選定から条件交渉、契約締結まで、より多くのステップが必要です。また、専門的な知識も求められるため、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることが一般的となっています。
このように、手続きの手間は売却の方が大きいものの、専門家のサポートを得ることで効率的に進めることが可能です。
廃業と売却(M&A)どちらを選ぶべきなのか
事業を終える際の選択は、経営者の状況や事業の特徴によって異なります。事業に価値があり、従業員の雇用維持を重視する場合は、売却(M&A)が有効な選択肢となるでしょう。
たとえば、優れた技術や安定した顧客基盤を持つ企業では、それらの価値を活かせる売却を検討する価値があります。一方、債務が多く、事業の継続が難しい状況では、廃業を選択するのが現実的な判断といえます。
最適な選択をするために、「事業の市場価値」「従業員への影響」「負債の状況」「手続きにかけられる時間」など、さまざまな要素を検討しましょう。また、専門家への相談を通じて、自社の状況に合った方法を見極めることが重要です。
まとめ
事業を終える際の選択は、慎重な判断が必要です。廃業は手続きがシンプルですが、従業員の解雇や資産の損失といった課題があります。一方、売却は手続きは複雑ですが、事業価値を活かしながら、従業員の雇用も維持できる可能性が高いのです。
選択の際は、事業の市場価値や従業員への影響、経営者自身の希望など、さまざまな要素を検討しましょう。また、専門家への相談を通じて、自社に最適な方法を見極めることをおすすめします。
まずは、この記事で解説した内容を参考に、自社の状況を冷静に分析してみてください。