バイアウトしやすい事業の条件|M&Aとの違いについても解説
バイアウトは、投資家が企業の株式を取得し、経営権を握ることを指します。近年、日本でもバイアウトを通じた事業再編や成長戦略の実行が活発化しています。
しかし、すべての事業がバイアウトに適しているわけではありません。
本記事では、バイアウトに適した事業の特徴について解説します。
バイアウトを検討している経営者や、事業売却を考えている方は、自社の事業がバイアウトに適しているかどうか、確認してみてください。
バイアウトとは|事業M&Aとの違いとは
バイアウトとは、投資家が企業の株式を取得し、経営権を握ることを指します。
一方、事業M&Aは、企業同士が合併・買収を行うことを指します。
バイアウトは、投資家が主導権を握るのに対し、事業M&Aでは、買収企業が主導権を握るという点で異なります。
バイアウトは、事業の成長性に着目した投資手法です。
投資家は、事業の潜在的な価値を見出し、バイアウト後に事業を成長させることで、高いリターンを得ることを目指します。
バイアウトしやすい事業の条件
では、どのような事業がバイアウトに適しているのでしょうか。バイアウトしやすい事業の条件は、以下の3つが挙げられます。
キャッシュフローが安定している
投資家は、安定したキャッシュフローを生み出す事業を好みます。
過去の財務実績が良好で、将来的にも安定した収益が見込める事業は、バイアウトの対象になりやすいでしょう。
具体的には、
- 月次・年次の売上および利益が安定している
- 売上の予測可能性が高い
- 売掛金の回収サイクルが短く、回収リスクが低い
- 仕入れ価格の変動が小さく、粗利率が安定している
- 固定費の割合が適切である
- 設備投資や運転資金需要が小さい
- 借入金への依存度が低く、金利変動の影響を受けにくい
以上のような特徴を持つ事業は、キャッシュフローが安定していると言えます。
キャッシュフローが安定している事業は、投資リスクが低く、投資回収の予測がたてやすいというメリットがあります。
事業モデルがシンプルでスケーラブル
事業モデルがシンプルで理解しやすく、売上拡大に伴いコストが大きく増加しない(スケーラビリティがある)事業は、バイアウトに適しています。
その理由としては
- シンプルな事業モデルは、投資家がリスクを評価しやすく、引継ぎもスムーズ
- スケーラビリティがある事業は、売上拡大に伴う利益の増加が見込める
- シンプルでスケーラブルな事業は、バイアウト後の成長と高値での売却が期待できる
新しいオーナーが事業を拡大していく際に、複雑な事業モデルは障壁となる可能性があるためです。
経営者への依存度が低い
特定の経営者の能力やノウハウに大きく依存している事業は、バイアウトの対象になりにくい傾向があります。
依存してしまうことにより、以下のようなリスクが挙げられます。
- 経営者の退任リスク
- ノウハウの継承リスク
- 意思決定の遅延リスク
- 事業の成長・発展の限界
- 従業員のモチベーション低下リスク
- ガバナンスの不透明性
- 事業の客観的な評価の困難さ
投資家は、経営者が退いた後も事業が安定的に運営できることを重視します。
そのため、事業運営が標準化・マニュアル化されていることが重要です。
バイアウトの種類について
バイアウトには、大きく分けて以下の3つの種類があります。
マネジメント・バイアウト(MBO)
MBOは、企業の経営陣が自社の株式を買い取り、経営権を獲得する形態のバイアウトです。
経営陣が自ら投資家となり、事業の成長を主導します。
MBOは、経営陣のインセンティブが高まり、事業の成長につながりやすいというメリットがあります。
レバレッジド・バイアウト(LBO)
LBOは、投資家が借入金を利用して企業の株式を取得する形態のバイアウトです。
投資家は、少ない自己資金で大きな投資を行うことができます。
LBOは、借入金の返済プレッシャーが経営効率化につながるというメリットがある一方で、金利変動リスクや財務リスクが高まるというデメリットもあります。
ストラテジック・バイアウト
ストラテジック・バイアウトは、事業会社が自社の事業戦略に沿って、他社の株式を取得する形態のバイアウトです。
事業会社は、バイアウトを通じて事業の拡大や新規事業への進出を図ります。
ストラテジック・バイアウトは、事業会社の経営資源を活用できるというメリットがある一方で、事業統合のリスクもあるので注意が必要です。
バイアウトの種類によって、投資家の目的や事業への関与の度合いが異なります。
MBOは経営陣主導型、LBOは財務主導型、ストラテジック・バイアウトは事業主導型のバイアウトと言えるでしょう。
バイアウトを検討する際は、自社の事業特性や成長戦略に合ったバイアウトの種類を選択することが重要です。
バイアウトの相場について
バイアウトの相場は、事業の業種、規模、成長性などによって異なります。
一般的には、EBITDA(税引前償却前利益)の5〜7倍程度が相場と言われています。
ただし、事業の将来性が高く、高い成長が見込める場合は、10倍以上の価格がつくこともあります。
バイアウトの価格は、事業の収益力だけでなく、事業の競争力、市場の成長性、経営者の能力など、様々な要素を総合的に判断して決定されます。
まとめ
バイアウトに適した事業の条件は、安定したキャッシュフロー、シンプルでスケーラブルな事業モデル、経営者への依存度の低さの3つが挙げられます。
これらの特徴を備えた事業は、投資家にとって魅力的な投資対象となります。
バイアウトを検討している経営者は、自社の事業がこれらの条件を満たしているか、確認してみてください。
条件を満たしている場合は、バイアウトを通じた事業の成長や売却を検討してみる価値があるでしょう。
バイアウトは、事業の成長戦略の一つの選択肢です。
事業の特性を理解し、適切なタイミングでバイアウトを活用することで、事業の価値を高めることができます。