会社廃業にかかる費用を具体的に解説!
近年、感染症の流行や物価高、円安は、経営に対して大きな影響を与えています。
さらに、国内では経営者の高齢化も進行しており、跡継ぎがいないといった問題も発生しています。
こうした状況の中で、会社の廃業を余儀なくされる経営者の方も少なくありません。
この記事を閲覧している方の中にも、会社経営に何かしらの問題を抱え、廃業を視野に入れているという経営者の方もいるのではないでしょうか。
会社の設立時と同様、廃業にもさまざまな費用が発生します。
廃業を検討しなければならないという状況になった際に役立つ内容となっておりますので、ぜひ最後までご覧ください。
会社の廃業にかかる費用
会社の設立時と同様、廃業にもさまざまな費用が発生します。
各企業の状況により廃業の費用は増減しますが、ここからは一般的な廃業時に必要な費用について5つ解説していきます。
- 解散登記
- 官報公告
- 税理士への依頼費用
- 在庫などの処分費用
- 不動産の現状復帰費用
解散登記
会社の廃業のためには、法務局へ解散登記の提出が必要になります。
解散登記は必ず必要な手続きとなり、登記を怠った場合には代表者に対して100万円以下の過料に処される場合がありますので、注意しましょう。
解散登記にかかる費用は下記の通りになります。
手続き名 | 費用 |
解散登記 | 30,000円 |
清算人登記 | 9,000円 |
清算結了の登記 | 2,000円 |
官報公告
会社の廃業をする際には、官報による公告も必ず必要となります。
官報公告とは、会社の廃業を債権者などに伝える書面です。
官報公告には1行あたり3,589円(税込)の費用が必要です。
廃業などの公告は9~11行ほどが目安とされており、約30,000円~40,000円ほどになることが多いとされています。
その他に、商業・法人登記情報や登記事項証明書などの書面が必要となりますので、覚えておきましょう。
書類名 | 費用 |
法人登記情報 | 332円 |
登記事項証明書 2通 | 600円/1通(オンライン請求は500円) |
※別途郵送費が必要になります。
税理士などへの依頼費用
廃業を行う場合、解散登記や精算処理を司法書士や税理士に依頼することも多いです。
司法書士に登記申請を依頼する場合、100,000円前後が相場となっています。
合わせて、清算に関する確定申告等の業務を税理士に依頼する場合、150,000~300,000円程度の費用が発生します。
各税理士事務所や業務量によって費用は変動するため、依頼を行う際には事前に費用の確認を行いましょう。
在庫などの処分費用
製造、販売業を廃業する際には、現在抱えている在庫処分を行う必要があります。
製品の在庫は、セール価格で在庫を販売できることが理想です。
しかし、万が一在庫の処分がうまくいかなかった場合には、廃棄業者を手配し、製品を処分しなければいけません。
どのような商品を処分するかによって金額は大きく変動するため、廃業を検討する際は計画的に在庫の処分を進めていきましょう。
H3:不動産の現状復帰費用
法人としてオフィスを借りていたり、店舗を展開している場合は契約解除の際に現状復帰費用が必要となります。
現状復帰費用は、オフィスの面積により大きく変動します。
そのため、まとまった金額を準備しておきましょう。
また、デスクなどのオフィス家具や会社にある備品の処分費用も発生します。
オフィス家具の買取サービスなどもあるため、処分費用をおさえるために利用を視野に入れておくこともオススメです。
廃業の準備について
廃業を検討する場合には、長いスパンで準備を進めていく必要があります。
社内外の調整、法的な手続きなど、業務は多岐に渡ります。
廃業検討されている方は、費用面の他に、廃業に向けて必要な手続きもあらかじめ理解しておきましょう。
廃業・解散に関する手続きについて
法人が廃業するためには、社内外に向けた解散の手続きや負債の清算処理の対応が必要となります。
社内外への通知や手続きの期間を考慮して、廃業・解散を行う場合は2、3か月前から準備を進めるようにしましょう。
ここからは、廃業、解散に関わる代表的な手続きを7つ解説していきます。
- 営業終了日の決定
- 社内外への廃業のお知らせの通知
- 株主総会での決議
- 解散、清算人の登記
- 廃業、解散の届出
- 官報への解散公告
- 解散事業年度確定申告を行う
- 清算
営業終了日の決定
廃業を決めたら、はじめにいつまで営業を行うのかを決定します。
従業員がいる場合、解雇通告を少なくとも30日以上前に行わなければなりません。
そのため、営業終了日は2か月から3か月以上先に設定することをおすすめします。
社内外への廃業のお知らせの通知
営業終了日が決まったら従業員や取引先をはじめとする関係会社への通知が必要です。
通知は、「廃業のお知らせ」などの形で書面での通達を行う方法が一般的となっています。
営業終了日の決定で触れたように、従業員に向けての解雇通告は労働基準法により
「廃業予定日の30日前までに行う」ことが義務付けられています。
従業員への解雇通告を行わずに廃業すると「解雇予告手当」の支払いが発生して
しまうため、廃業の通知は必ず行いましょう。
株主総会での決議
廃業が決定したら株主総会での決議を実施します。
株式会社の場合は特別決議の審議を行い、解散を決定します。
特別決議は、議決権の過半数が出席する株主総会で、3分の2以上の賛成が必要となりますので、議決権を持つ方を必ず揃え、株主総会を実施しましょう。
清算人の登記
株主総会では解散の決議に加え、清算人という人物を決めなければいけません。
清算人は会社の清算手続きにおいて不備があった場合に債権者に対しての責任を負う
役割を持ちます。
清算人決定の後は、2週間以内に法務局で廃業に向けた登記が必要になります。
廃業、解散の届出
清算人の登記が完了した後は、税務署や役所等への届出を行います。
廃業にあたり届出が必要となる主な関連機関は以下の通りです。
・税務署
・法務局
・市区町村役場
・労働局または労働基準監督署(従業員の解雇が発生する場合)
・社会保険事務所
※会社により、手続きが必要な機関が異なりますので、担当の司法書士に確認を取ることをおすすめします。
官報への解散公告
会社法499条により、株式会社が廃業する際には、官報という政府・省庁が発表する告知が掲載される場所へ解散公告を行う義務が発生します。
掲載期間は2か月以上と定められており、一定期間内に債権の内容を届け出るように
依頼を掲載します。
公告には、一定期間を過ぎた場合に、債権者がその権利を行使できないという旨も必ず記載しておきましょう。
解散事業年度確定申告を行う
解散日の翌日から2か月以内に、解散事業年度確定申告を行いましょう。
解散事業年度確定申告により、法人税、消費税、法人住民税、事業税の確定申告を行います。
通常の事業年度が始まった日から解散の日までを解散事業年度といい、事業年度が解散事業年度確定申告の対象期間となります。
清算
登記を行った清算責任者は、会社資産の売却や債権の回収を行った後、資産の売却と債権の回収で得た資金で、債務を弁済しなければなりません。
債務が完済出来る場合「通常清算」、債務の完済が不可能な場合は裁判所管轄の下、「特別清算」という方法で清算を行う運びとなります。
廃業を決断する前に検討する選択肢
これまでは、会社の廃業を行う想定でしたが、廃業を決断する前に検討しておくべき事項について3つ解説していきます。
- 休眠
- M&A
- 金銭の準備
休眠
一定期間だけ会社の事業を止めたいという場合には、休眠という選択も1つです。
会社の休眠は、税務署、都道府県税務署、市町村役場に休業の届出を行うことで会社の事業を停止できる手続きです。
廃業と異なり、休業は届出を行うだけで完了するため、手間が少なく済みます。
廃業を決断できない場合には、会社を休眠状態にし、会社の継続、廃業の判断を改めて行うというのも1つの選択肢です。
M&A
従業員の雇用などを考え、廃業を迷っている場合には、M&Aも有力な選択肢となりえます。
専門家に相談すれば、会社の資産価値を算出し、売却先探しを行えます。
企業の資産価値によっては、負債を含め、まとめて事業を引き継いでもらえる可能性がありますので、まずは専門家への相談を行ってみることがオススメです。
まとめ
会社の廃業には、まとまった費用が必要になります。
廃業を行うには、手続き、費用をしっかりと把握し、滞りが無いように各手続きを進行していく必要があります。
もし、会社を廃業を検討しているという場合には、早期に専門家に相談を行い、適切な方法を見極めましょう。