スタートアップのM&Aとは|売り手買い手側のメリットや注意点を解説
スタートアップ企業の中には、イグジット戦略としてM&Aを検討している企業も多いのではないでしょうか。
実際にスタートアップM&Aのニーズは高まっており、その件数も増加中です。
そこで本記事ではスタートアップM&Aの概要やその増加の背景を解説し、売り手と買い手双方にとってのメリットを紹介します。
スタートアップM&Aを成功させるためのポイントも解説するため、M&Aによるイグジットを検討中の方は参考にして下さい。
スタートアップM&Aとは
近年「スタートアップM&A」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、そもそもスタートアップM&Aとは何か理解している方は少ないのではないでしょうか。
まずはスタートアップ及びM&Aについて詳しく解説します。
スタートアップとは
経済産業省の説明によると、スタートアップは以下の3つの特徴を持っている企業のことです。
- 新しい企業であって
- 新しい技術やビジネスモデル(イノベーション)を有し、
- 急成長を目指す企業
つまりスタートアップとは、革新的な技術やビジネスモデルを持ち、新たな市場を開拓することで、短期間で急成長を目指す創業間もない企業のことです。
安定した経営よりも「成長性」を重視し、成功すれば短期間で大きなリターンを得られる可能性があります。
M&Aとは
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の頭文字を取った言葉で、企業の合併・売却を指す用語です。
複数の企業が一つの会社に統合される合併や、ある企業が他の企業を買い取る買収などがあり、企業規模の拡大や事業の強化、新市場への進出などを目的に実施されます。
M&Aのスキーム(手法)は、大きく分けて次の4つです。
- 事業譲渡
- 株式譲渡
- 会社分割
- 合併
中小企業が実施した「M&A実施企業の実態」によると、最も一般的なM&A手法は事業譲渡で41%、次いで株式譲渡が40.8%を占めており、ほとんどのM&Aではこの2つの手法が選ばれています。
スタートアップM&Aが増えている背景
スタートアップM&Aが増えている背景には「技術革新の加速」と「市場ニーズの多様化」が大きく影響しています。
技術革新が急速に進む中、どれほど革新的な商品を開発しても、すぐに古くなる可能性があります。
競争力を維持するためには、最新技術が欠かせません。
スタートアップが持つ革新的な技術やビジネスモデルをM&Aで獲得することで、自社でゼロから開発するよりも効率よく最新技術を手に入れることができます。
さらに、市場ニーズの多様化により消費者の要求がより細分化していることも、M&Aの増加に関係しています。
細分化されたニーズに対応するためには、新たな技術が必要です。
スタートアップが持つ専門的な技術や新しいアイデアを活用することで、いち早くニーズに対応できるようになります。
スタートアップM&Aを活用するメリット
スタートアップM&Aにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ここではスタートアップM&Aにおける売り手側・買い手ごとのメリットを確認していきましょう。
売り手側のメリット
スタートアップM&Aを実施した場合の売り手側のメリットは、以下の通りです。
- IPOと比較して短期間でイグジットを実現できる
- 事業展開を加速させることができる
- 新たなビジネスやプロジェクトに投資できる
IPO(新規株式公開)とは、未上場企業が証券取引所に株式を新規に公開し、投資家から資金を調達する方法です。
しかし、IPOを実現するためには、申請や準備に少なくとも3年程度かかります。
一方、M&Aは買い手・売り手が合意すれば、最短1ヶ月で成約することも可能です。これにより、早くイグジットを実現できます。
また、買い手側の資金やノウハウ・顧客などの経営資源を活用することで、これまでよりも早いスピードで事業を拡大させることも可能です。
さらに、M&Aを通じて得た資金で新しいビジネスやプロジェクトに投資し、さらなる成長や事業の多角化を目指すこともできるでしょう。
買い手側のメリット
スタートアップM&Aにおける買い手側のメリットは、以下の通りです。
- 新規事業へ迅速に参入できる
- 既存の事業を強化できる
ゼロから新規事業を立ち上げるには、多くのリソースと時間が必要です。
スタートアップM&Aを活用すれば、売り手側の人材や設備、顧客、ノウハウなどを一気に獲得できます。その結果、新規事業へ迅速に参入することができるでしょう。
既存の事業を強化できる点も、買い手側のメリットの1つです。
スタートアップが持つ革新的な技術やビジネスモデルを取り込むことで、既存事業を強化できるだけでなく、競争力も高められます。
スタートアップM&Aを成功させるポイント
スタートアップM&Aを成功させるためには、企業はどのようなポイントに注意すべきなのでしょうか。
ここからはスタートアップM&Aを成功させるためのポイントを3つご紹介します。
売却するタイミングを慎重に判断する
スタートアップM&Aを成功させるためには、売却のタイミングを慎重に判断する必要があります。
スタートアップM&Aでは「企業の将来の成長性」が鍵となるからです。事業が成熟してしまった段階での売却では遅いのです。
したがって、企業が成長途中であり、さらなる成長の余地がある段階で売却することが、より高い価格で売却を実現するポイントとなります。
最適なタイミングでの売却が、M&A成功のために不可欠です。
バリエーションを適切に設定する
バリエーション(企業価値評価)を高く設定しすぎないことも、スタートアップM&Aを成功させる大切なポイントです。
M&Aをイグジットの手段として選ぶ場合、バリエーションが過度に高いと、買い手が減り、結果的に売却が難しくなる可能性が高まります。
スタートアップ側は将来の成長を見込んで評価しがちですが、買い手側は今後の成長を保守的に見積もる傾向がある点には、注意しなければなりません。
適切なバリエーションを設定し、M&Aを成功に導きましょう。
従業員の不安を解消する
従業員の不安を解消することも、スタートアップM&A成功には欠かせません。
M&Aを実施すると以下のような変化が従業員に起こります。
- 経営体制や方針の変化
- 企業文化の変化
- 職場環境の変化
- 待遇の変化
これらの変化により、従業員は不安を感じることがよくあります。
不安を放置していると、従業員のモチベーションが低下し、場合によっては退職にまでつながる可能性もあるでしょう。
従業員の不安を解消するためには、丁寧に説明を行うことが重要です。
幹部社員にはM&Aの基本合意前から情報を共有し、基本合意後には役員や管理職、そしてM&A成約後には一般従業員に対して丁寧に説明を行い、安心感を高めましょう。
まとめ
スタートアップM&Aは、売り手・買い手双方にとってメリットのある戦略のひとつです。
売り手側は短期間でのイグジット実現や事業拡大、新たなビジネスへの投資機会を得られます。
買い手側は新規事業へ迅速に参入できるうえに、既存事業の強化も図れるでしょう。
スタートアップのイグジットに迷われている方は、本記事で紹介した内容を参考に、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。