経営不振の原因と対策について|事業承継に与える影響はあるのか?
企業経営は、将来を見据えて業績も順調に推移しながら、少しずつでも成長を続けていけるようでなければ長続きすることはありません。
短期間で経営不振に陥るようなら、経営者として失格だと、外部からの評価を受けてしまいます。
しかし、経営不振は突然起こるものではありません。
経営不振に陥る前には、自社内や社外で何かしらの予兆が始まっています。
そのため、日頃から自社の経営状態をよくつかみ、その都度適切に対処していく必要があります。
事業承継を考えているなら、当然ですが、経営不振に陥った企業を引き受けるところは少なくなりますのでご注意ください。
この記事では、経営不振の原因と対策、さらには事業承継にどのような影響を与えるのか、について解説していきます。
経営不振の意味
経営不振とはどのような状態を意味するのでしょうか?
順調な経営状態と比較して、どのようになれば経営不振になってしまうのでしょうか?
自社の経営状態を正確に把握するためにも、経営不振になった時の具体的な状況をよく理解し、最悪のケースでは「倒産」に至るということを知っておいてください。
経営不振とはどのような状況を意味するのか?
経営が順調にいっていない、経営者が理想とする経営状況ではない、といった場合は、自社が「経営不振」の状態にある、といってもいいでしょう。
企業経営は、継続的な売上が上がっており、コンスタントに利益を積み上げていくような状態が理想です。
そして、事業を長期的に続けるには、事業や設備への新規投資も必要です。
しかし、一時的に赤字になって、その状態が慢性化すると、経営不振の状態になります。
赤字補填や追加投資ができなくなれば、最終的には倒産してしまうかもしれません。
経営不振に陥った企業を引き継ぐところは少なくなり、事業承継にも悪い影響を与えるということはいうまでもありません。
順調な経営状態とは?
企業経営が順調だといえるには、売上が上がっているだけではなく、決算期毎に、売上や利益が拡大し、稼いだ利益を新規の事業や設備へと投資していけるような状態であることが理想です。
このサイクルが順調に回っていると、資金繰りでキャッシュが途絶えることはありません。
そして、追加の再投資で、さらに経営を拡大できるような状態です。
経営不振になると「倒産」という経営の失敗が待っている
経営不振の最初の予兆は、売上の減少です。
売上が減少すれば、利益も減少し再投資できなくなります。成長ができなくなり、利益がマイナスになれば、キャッシュや資産などが減っていき、営業活動を停止しなければなりません。
経営不振に陥ると、最終的には「倒産」と呼ばれる経営の失敗で撤退せざるを得なくなります。
経営不振になる原因
企業が経営不振にならないためにも、経営不振になる原因をよく理解しておきましょう。
中小企業庁の「倒産の状況」によると、企業の倒産理由の上位は、次の5つになっています。
経営不振の原因の7割以上は販売不振です。
その他、慢性的な業績悪化(既往のしわよせ)や連鎖倒産が続いています。
- 販売不振
- 慢性的な業績悪化が続いている
- 連鎖倒産
- 放漫経営
- 過小資本
販売不振
倒産理由の7割以上は、「販売不振」が主な原因です。
売上高=販売数量✕販売単価
で計算できますので、売れない状況とは、販売数量の減少や販売単価の低下です。
真の原因は、商品やサービスの競争力が低下したことです。
また、過剰な値引き販売で販売単価が下がって売上が減ってしまうこともあります。
慢性的な業績悪化が続いている
長期的な業績悪化が続くと、どのような業種の企業でも倒産寸前になってしまいます。
このケースでは、短期的な要因で急激に業績が悪化して倒産したわけではなく、長期的な要因によって業績悪化が継続しているような状況です。
多くは構造的な問題を抱えており、業界全体が不況になっている恐れもあります。
連鎖倒産
売掛金などの債権が残ったまま重要な取引先が倒産すると、多額の債権が回収不能になってしまいます。
これが原因で資金繰りが悪化し、自社が倒産します。
例えば、自社が親会社からの受注がほぼ100%の下請け企業だとすると、親会社の倒産によって発注がなくなり売上が激減して連鎖倒産するといった状況です。
放漫経営
経営者の無駄遣いが多いと、いくら販売を続けて利益をあげても、再投資へと回らないことから、成長のサイクルに乗れずに経営不振に陥ることが多くなるからです。
過小資本
内部留保(過去の利益の蓄積)が少ないと、一時的な販売不振での赤字をカバーできなくなります。
債務超過の状態が続くと、倒産寸前になってしまいます。
債務超過状態が解消されないと、金融機関からの新規の融資が受けられずにあっさり倒産してしまう恐れがあります。
一定水準の純資産を維持する経営が必要です。
経営不振に対する改善策
順風満帆な経営状態が続いていても、突然販売不振に陥る可能性があることは常に頭に入れておきましょう。
そして、経営不振に陥ったときは、早めに何らかの手を打って短期間で改善して元の状態に戻す必要があるでしょう。
そこで、経営不振に対する代表的な改善策について解説していきます。
- コスト見直しによる粗利益率の向上
- 財務基盤を強化する改善策
- 売上を拡大させる改善策
コスト見直しによる粗利益率の向上
売上を増やすことは難しいため、最初にできる経営不振対策といえば、費用の見直しです。
無駄な費用をカットし、低コスト運営に変えていきましょう。
まずは、売上に直結する売上原価(製造原価)に含まれる費用項目の見直しによって、粗利益率を向上させる努力を行います。
次は販管費を見直して、営業利益の改善に努めましょう。
財務基盤を強化する改善策
財務基盤を強化する改善策とは、財務諸表の貸借対照表を元に考える経営不振改善策です。
- 債務のリスケジューリング
- 不動産の売却
- 出資の受け入れ
- M&Aや合併
債務のリスケジューリングを実施する
業績が持ち直すまで、金融機関に債務のリスケジューリングを申し出る方法です。
元利払いの一時的な中止や利息返済のみなど、金融機関と交渉し、借り入れの返済や利払いを減らす経営不振改善策です。
ただし、リスケジューリング後は、追加融資が受けられなくなる点にご注意ください。
遊休資産や不良在庫を現金化する
遊休資産は何も生み出しません。利用しないのなら売却して現金化してください。
不要な在庫や不良在庫も資金繰りを圧迫するため、定期的に見直してキャッシュフローを改善します。
取引先や親会社からの出資を受け入れる
自己資本比率が低い企業の場合は、債務超過に陥っている恐れがあります。
親会社や取引先の出資を受け入れて、財務基盤を安定させましょう。
M&Aによる会社の売却や合併
M&Aは、会社の売却のことです。
経営不振で業績が向上しない場合は、親会社や取引先に救済合併してもらう方法もあります。
売上を拡大させる改善策
売上拡大は、コスト見直しや財務基盤の安定化が実現できた後に行う積極的な経営不振改善策です。
継続的な売上の拡大に伴って、利益も増加していくでしょう。
売上を拡大するには次の方法が考えられます。
- 新規事業への進出
- 新商品の開発と販売
- 新しいマーケティングの実施
経営不振が事業承継に与える影響はあるのか?
次は経営不振が事業承継にどのような影響を与えるのかについて検討してみましょう。
下記のような問題が考えられますが、後継者が経営不振企業を引き継ぐ場合は、相当な覚悟が必要になります。
経営不振になってから事業承継を考えると後継者がなかなか見つからないことがあります。
そのため、経営不振の状態を早めに解決することを優先し、その後事業承継へと進めていったほうがスムーズです。
- 経営不振の企業を引き継ぐ後継者がいないこと
- 倒産の可能性が高い事業承継となること
- 経営不振による企業価値の大幅下落
経営不振の企業を引き継ぐ後継者がいないこと
経営不振企業をわざわざ引き継ぐ経営者は、相当な覚悟が必要です。
そのため、家族や親族以外で後継者を見つけようとしてもなかなか見つかりません。
従業員の雇用やそのご家族にも迷惑をかけることになります。
このような理由から、経営不振になる前に後継者を選出しておくことをおすすめします。
また、M&Aなどで外部組織への承継を検討したほうがいい場合もあります。
倒産の可能性が高い事業承継となること
後継者が見つかったとしても、経営不振はすぐには解消できません。
倒産する可能性の高い企業を受け継ぐと、残債は社長が負担しなければならない恐れがあります。
無理な事業承継は後継者に大きな負担をかけてしまうでしょう。
倒産の可能性が高いということであれば、廃業を決断して、取引先や従業員にかかる負担やその他被害を最小限に抑えたほうがいい場合もあります。
経営不振による企業価値の大幅下落
経営不振や倒産寸前の企業は、M&A市場でも人気がなく、企業価値も低めです。
しかし、経営不振の企業でも買収が可能となるケースもあります。
次のような理由で経営不振企業を買収する買い手も多いので諦めないようにしてください。
- 優秀な人材が多い
- 独自の技術やノウハウを持つ
- 世界的に通用するブランド力
まとめ
この記事を通して、経営不振の原因と対策について考えてきました。
あわせて、事業承継に与える影響についてもわかりやすいように解説しました。
経営不振に陥るような企業は、経営者として失格だという外部評価を受けてしまうため、その企業の評価も通常は低くなってしまいます。
しかし、経営不振は突然起こるわけではありません。
自社内で何かしらの予兆を見逃さないようにすることが重要です。
そのため、日頃から自社の経営状態をよくつかみ、その都度適切に対処していきましょう。