会社の所有と経営の分離とは?メリットやデメリットに関しても徹底解説!

会社の所有と経営の分離

経営を始めたばかりのあなたは、会社を運営する上で『所有と経営の分離』という言葉を聞いたことのある方は多いのではないでしょうか。

所有と経営の分離という考え方は経営者としての視点を広げ、企業成長の鍵を握る可能性があります。

しかし実際にはどのようなものか、それにはどんなメリットやデメリットがあるのか、明確に理解していない人も少なくありません。

この記事では所有と経営の分離の詳細について解説をします。

この記事を読むことで、経営の質を向上させたい方や長期的なビジョンを持って企業を大きくしたい方にとってはまさにガイドとなるでしょう。

目次

会社の所有とは?

会社の所有について考える時、誰がその会社の持ち主であるのかを意味します。

具体的には会社の株を持っている人、すなわち株主を指す言葉として使われることが一般的で、株主はその名の通り会社に資金を提供する出資者のことを示しています。

株主には出資金額の大きさや株の数に応じて、会社の未来を左右する運営方針や方向性など多岐にわたる重要な判断をする権限が付与されていると言えるでしょう。

会社の経営とは?

会社の経営というと、どのような活動や役割を思い浮かべるでしょうか。この経営とは事実上、会社を運営・指揮する役職や権限を有することを指します。

具体的には、取締役や代表取締役といった役職を持つ人たちがこの経営責任を担います。

経営者とはその会社の未来を形作る上で非常に重要な役割を果たす人物なので、経営の質が会社の成功を大きく左右するとも言えるでしょう。

会社の所有と経営の分離とは?

会社の所有と経営、これらを別々の役割や権限として考えるのが所有と経営の分離の基本概念で、株主は会社に資本を供給して経営方針や重大な決定に関する権限を持っています。

一方で経営者は日々の業務指導や経営活動を主導し会社の発展や利益追求を目的に活動して、株主と経営者の役割や権限が明確に分けられていることを指します。

特に中小企業の環境では、代表取締役が主要な株を保有することが一般的ですが、これは株式会社の原則からは逸脱しているケースが少なくありません。

しかし所有と経営を明確に分離することによって、経営の透明性や効率性を高めるメリットがあります。

所有と経営を分離するメリット

所有と経営を分離することによって、株主と経営者双方にとってさまざまなメリットが生まれます。

こちらでは所有と経営を分離するメリットについて、いくつかまとめました。

コーポレートガバナンス強化

コーポレートガバナンスは会社の透明性や迅速な意思決定を促す体制や構造のことで、所有と経営がしっかり分かれている場合、株主たちは経営動向や判断を厳しく監視できます。

その結果経営側の不正やミスを未然に防ぐことが可能となり、企業の公正性や誠実性が高まります。これは会社全体の信頼性や評価を高める重要な要素となるでしょう。

得意なことへの注力が可能

経営には特定の能力や知識が求められ、所有には資金的なバックグラウンドが必要ですが、すべての経営者が両方の要素を持っているわけではありません。

所有と経営が分離されていると経営者は経営戦略や業務の最適化に注力でき、一方の株主は資金の提供や投資に焦点を当てることができます。

このようにそれぞれが得意な部分に専念することで、企業全体のパフォーマンスや業績が向上する可能性が高まります。

資金調達の行いやすいケースがある

経営者が大部分の株を持っている場合、新たに株式を発行することでの資金調達は難しいことがあります。

しかし所有と経営がきちんと分離されていると、企業は新しい株式を発行して外部からの資金を集めやすくなります。

この流動性の高まりは新しい事業展開や研究開発への投資、さらなる成長の機会を得るための大きな武器となり得るでしょう。

経営が効率化できる

  • 専門性の高い経営者の登用
  • 意思決定の迅速化
  • 経営の監督機能の強化

所有と経営が分離されていることで、会社は株主の中から経営者を選ぶのではなく、広く社外から専門性の高い経営者を招聘することができます。このような経営者は、その専門知識と経験を活かして、会社の経営効率を高めることができます。

所有と経営が分離されていない場合、重要な意思決定には株主総会の承認が必要となり、意思決定のスピードが遅くなる傾向があります。一方、所有と経営が分離されている場合、経営者は株主の意向を踏まえつつも、自らの判断で迅速な意思決定を行うことができます。

また、取締役会は株主の利益を代表する立場から、経営者の業務執行を監督する機能を果たすことができます。これにより、経営の透明性が高まり、ガバナンスが強化されます。

株主への利益還元ができる

  • 当政策の柔軟性
  • 株式の流動性の向上
  • 株主価値の向上

所有と経営が分離されていることで、会社は柔軟な配当政策を採ることができます。経営者は、会社の業績や財務状況を踏まえて、適切な配当額を決定することができます。これにより、株主は安定的な配当収入を得ることができます。

所有と経営が分離されていることで、株式の流動性が高まります。株主は、自らの判断で株式を売買することができ、必要に応じて資金化することができます。これにより、株主は投資リスクを管理しやすくなります。

所有と経営が分離されていることで、経営者は株主価値の向上に注力することができます。経営者は、ROEやROAなどの財務指標を重視し、収益性の向上を図ります。これにより、株主は株価の上昇による利益を得ることができます。

このように、所有と経営を分離することで、経営の効率化と株主への利益還元を実現することができます。ただし、所有と経営の分離には、エージェンシー問題(経営者が株主の利益よりも自らの利益を優先する問題)が生じるリスクもあります。このリスクを管理するためには、適切なガバナンス体制の構築が不可欠です。

所有と経営を分離するデメリット

所有と経営を分離することによってさまざまなメリットがありますが、その反面デメリットがあることにも留意する必要があります。

こちらでは所有と経営を分離するデメリットについて、以下にまとめました。

意志決定速度の低下

所有と経営を分離する場合、意思決定の過程が長引くことが考えられます。

なぜなら経営者は全ての決断を自らが下すわけではなく、さまざまな関係者との調整が必要となるからです。

その結果、経営者が自分の考えを即座に実行に移すことが難しくなることも考えられるでしょう。

即座に実行に移せない状況は、柔軟な対応が求められるビジネスシーンでは特に問題となることも少なくはありません。

経営者のモチベーション低下

経営者のモチベーションは企業の成功に直結する非常に重要な要素です。

しかし所有と経営が分離されると経営者の収益はおもに役員報酬として固定される場合が多く、企業の成長とは直接関係しづらくなります。

一方で株主は企業の成果に応じて増益を享受できることが期待されます。

このような状況は、経営者がモチベーションを維持するのを難しくさせてしまう要因となるかもしれません。

株式譲渡によるリスク

所有と経営が分離されることで会社の株式が容易に取引されるようになり、それに伴うリスクも高まります。

株式市場での取引は自由であり、さまざまな投資家が関わることとなります。過去には著名な経営者が他社の買収を目指すなど、大きな話題となる事例もありました。

株主の変更は企業の方向性や経営戦略に影響を与える可能性があり、それが新たなリスクとして現れてしまうこともあるでしょう。

敵対的買収の対象となるリスク

所有と経営が分離されている企業では、株式が多数の株主に分散されています。このため、買収者は市場で株式を買い集めることで、比較的容易に大量の株式を取得することができます。これにより、買収者は経営権を獲得し、経営方針を変更することが可能となります。

経営陣の防衛策の限界

敵対的買収に対して、経営陣は様々な防衛策を講じることができます。例えば、ポイズン・ピル(株主権利計画)や白衣の騎士(友好的な第三者による買収)などがあります。しかし、これらの防衛策にも限界があり、買収者の提示する条件次第では、防衛策が功を奏さない可能性があります。

企業価値の毀損リスク

敵対的買収が成立した場合、買収者は自らの利益を優先して経営方針を変更する可能性があります。このため、買収対象企業の企業価値が毀損されるリスクがあります。特に、買収者が短期的な利益を追求する場合、長期的な企業価値の向上が阻害される恐れがあります。

このように、所有と経営が分離されている企業は、敵対的買収のリスクにさらされています。このリスクを軽減するためには、以下のような対策が考えられます。

  • 安定株主の確保:長期保有の方針を持つ株主を確保することで、敵対的買収のリスクを低減できます。
  • 買収防衛策の導入:ポイズン・ピルなどの買収防衛策を導入することで、敵対的買収を阻止することができます。
  • ステークホルダーとの対話:株主、従業員、取引先などのステークホルダーと対話を重ね、敵対的買収に対する理解と協力を得ることが重要です。

ただし、これらの対策にも限界があり、完全に敵対的買収のリスクを排除することはできません。所有と経営の分離によるメリットを享受しつつ、敵対的買収のリスクを最小化するためには、適切なガバナンス体制の構築と、ステークホルダーとの継続的な対話が不可欠と言えるでしょう。

オーナー社長のメリットとリスク

オーナー社長は自らが出資者でもあり、企業経営に関する決定もできるという大きな特徴があります。

こちらではオーナー社長のメリットとリスクについて、いくつかまとめました。

メリット1 会社の意志決定を自身で行える

オーナー社長の大きな魅力のひとつは、会社の方向性や重要な決定を自らの意志で進められることです。

自分が決定した方針や戦略を迅速に実行できるのは、業界での競争力を高める上での大きな利点です。

役員の選任や解任、会社の方針変更、事業拡大や縮小などさまざまな経営判断がスムーズで瞬時に判断を下すことができるのも大きなメリットといえるでしょう。

メリット2 役員報酬とは別の利益を受け取れる

オーナー社長として企業の業績が良ければ、役員報酬だけでなく保有している株式からの配当収入も期待できます。

しかし役員報酬を増やすことは法人税の面で有利に働くものの、自身の所得税が増える要因ともなることを忘れてはなりません。

リスク1 会社経営における全責任を負う

オーナー社長は企業の業績が上向いていればその利益を享受できますが、逆に業績が低迷したときのリスクも全て自分で背負わなければなりません。

業績悪化の際は社長が個人的な資産を投じるケースも少なくありません。

さらに事業資金の調達で個人保証を行った場合、返済責任が社長個人に及ぶこともあるため、会社の経営状況は社長個人の資産状況にも大きく影響します。

リスク2 事業承継や後継者問題への対応

事業承継はオーナー社長の大きな課題で、特に親族を中心とした経営の場合に後継者の選定や育成に時間がかかることが一般的です。

また経営に関与しない親族との間で、財産の不公平感が生じることもあり得るでしょう。

事業の継承や後継者の選定、育成には計画的に取り組む必要があり、早めの計画と実行が、これらのリスクを軽減するカギとなるでしょう。

まとめ

これまでは会社の所有や会社の経営、会社の所有と経営の分離が何なのかについて、また所有と経営を分離するメリット・デメリットなどについて解説をしてきました。

会社の所有と経営を分離することには、メリットとデメリットがそれぞれ存在します。

コーポレートガバナンスが強化できて各々が得意なことに注力できる反面、意思決定や経営者のモチベーションが低下しやすい側面があります。

メリットとデメリットそれぞれの要素を考慮しながら会社の所有と経営の分離を実施する場合は、持株会社の設立や株式公開などの手法もあるので、専門家に相談してみましょう。

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