第二会社方式とは?メリットとデメリットや成功させるポイントを解説
近年、企業再生の手法として注目を集めているのが第二会社方式です。
第二会社方式とは、経営難に陥った企業が、新たに別の会社を設立し、そこに優良な事業や資産を移転することで、事業の再生を図る手法です。
本記事では、第二会社方式の概要やメリット、デメリット、スキーム、成功のポイントなどについて詳しく解説します。
第二会社方式とは
第二会社方式とは、経営難に陥った企業が、新たに別の会社を設立し、そこに優良な事業や資産を移転することで、事業の再生を図る手法です。
具体的には、経営難に陥った企業(第一会社)が、新たに設立した子会社(第二会社)に、優良な事業や資産を移転します。
第一会社は、不採算事業や不良債権を抱えたまま残りますが、第二会社は、優良な事業や資産を引き継ぐことで、事業の再生を図ることができます。
第二会社方式は、事業再生の手法の一つとして位置づけられています。
事業再生とは、経営難に陥った企業が、事業の選択と集中や資産の売却、債務の圧縮などを通じて、事業の収益性を改善し、再び成長軌道に乗せることを指します。
第二会社方式は、事業再生の手法の中でも、比較的スピーディーに実行できる手法として知られています。
第二会社方式のメリット
- 事業再生が可能
- 債権を損金計上できる
- スポンサーがつきやすい
事業再生が可能
第二会社方式の最大のメリットは、事業再生が可能なことです。
経営難に陥った企業が、優良な事業や資産を新たな会社に移転することで、事業の収益性を改善し、再び成長軌道に乗せることができます。
特に、不採算事業や不良債権を切り離すことで、事業の選択と集中を進めることができるため、事業再生の効果が期待できます。
第二会社方式では、優良な事業や資産を新たな会社に移転することで、事業の継続性を確保することができます。
これにより、取引先や従業員、地域社会などのステークホルダーとの関係を維持しながら、事業の再生を図ることができます。
また、新たな会社では、過去の負の遺産から解放されるため、新たな経営体制のもとで、事業の再構築を進めることができます。
債権を損金計上できる
第二会社方式のメリットの一つは、債権を損金計上できることです
。経営難に陥った企業が、第二会社に優良な事業や資産を移転する際、第一会社に残った不良債権を損金計上することができます。これにより、第一会社の税負担を軽減することができます。
不良債権を損金計上できるのは、第二会社方式が、会社分割や事業譲渡などの手法を用いるためです。
会社分割や事業譲渡では、移転する資産の価値を時価で評価するため、第一会社に残った不良債権の価値を切り下げることができます。これにより、第一会社の債務超過額が減少し、税負担を軽減することができます。
スポンサーがつきやすい
スポンサーがつきやすいことです。スポンサーとは、経営難に陥った企業に対して、資金支援や経営支援を行う企業や投資家のことを指します。
第二会社方式では、優良な事業や資産を新たな会社に移転するため、スポンサーにとって魅力的な投資先となります。
スポンサーがつきやすいのは、第二会社が、優良な事業や資産を引き継ぐためです。
優良な事業や資産は、将来的な収益性が見込めるため、スポンサーにとって魅力的な投資先となります。
また、第二会社では、過去の負の遺産から解放されるため、スポンサーにとってリスクが低く、投資しやすい環境が整っています。
第二会社方式のデメリット
- 状況によって融資を受けにくいこともある
- 新設や移設のコストが発生する
- 新たに許認可の申請が必要なケースがある
状況によって融資を受けにくいこともある
第二会社方式のデメリットの一つは、状況によって融資を受けにくいこともあることです。
第二会社方式では、優良な事業や資産を新たな会社に移転するため、第一会社の信用力が低下します。このため、金融機関から融資を受けにくくなる可能性があります。
特に、第一会社が債務超過に陥っている場合、金融機関は融資に慎重になります。
債務超過とは、負債が資産を上回っている状態を指します。債務超過に陥っている企業は、返済能力が低いと判断されるため、金融機関から融資を受けにくくなります。
融資を受けにくいことで、第一会社の資金繰りが悪化する可能性があります。
資金繰りの悪化は、事業再生を阻害する要因となります。このため、第二会社方式を検討する際は、金融機関との関係性を維持し、融資を受けられる環境を整えることが重要です。
新設や移設のコストが発生する
第二会社方式のデメリットの一つは、新設や移設のコストが発生することです。第二会社方式では、新たに会社を設立し、優良な事業や資産を移転するため、一定のコストが発生します。
具体的には、会社設立の登記費用や事務所の移転費用、什器備品の購入費用などが発生します。
また、従業員の移籍に伴う手続きや、取引先との契約変更なども必要となるため、コストがかかります。
コストの発生は、第二会社の収益性に影響を与える可能性があります。
特に、第二会社の立ち上げ期は、収益が安定しないことが多いため、コスト増加が経営を圧迫する可能性があります。
このため、第二会社方式を検討する際は、コストを最小限に抑える工夫が必要です。
新たに許認可の申請が必要なケースがある
第二会社方式のデメリットの一つは、新たに許認可の申請が必要なケースがあることです。
第二会社方式では、新たに会社を設立するため、事業に必要な許認可を改めて取得する必要があります。
例えば、建設業や運輸業、飲食業などの業種では、事業を営むために許可や登録が必要となります。
第二会社が、これらの業種の事業を引き継ぐ場合、改めて許可や登録を取得する必要があります。
許認可の申請には、一定の時間とコストがかかります。申請に必要な書類の準備や、審査の期間などを考慮する必要があります。
また、許認可の基準を満たすための設備投資や人材の確保なども必要となる場合があります。
許認可の申請が必要なケースでは、事業の開始が遅れる可能性があります。
このため、第二会社方式を検討する際は、許認可の申請が必要かどうかを確認し、必要な対応を事前に準備することが重要です。
第二会社方式のスキーム
スキーム | 特徴 |
会社分割 | 手続きが複雑。 債権者保護手続きが必要。債権者の同意を得やすい。 |
事業譲渡 | 手続きが簡単。 譲渡する事業の範囲や従業員の承継について、当事者間の合意が必要。 |
会社分割
第二会社方式のスキームの一つは、会社分割です。会社分割とは、企業が、自社の事業の一部を切り離して、新たな会社を設立する手法です。
第二会社方式では、経営難に陥った企業が、優良な事業や資産を切り離して、新たな会社を設立します。
会社分割には、新設分割と吸収分割の2つの方式があります。
新設分割は、企業が新たに会社を設立し、その会社に事業を移転する方式です。吸収分割は、企業が既存の会社に事業を移転する方式です。第二会社方式では、主に新設分割が用いられます。
会社分割には、株主総会の決議が必要となります。
ただし、簡易分割や略式分割の要件を満たす場合は、株主総会の決議を省略することができます。
また、会社分割では、債権者保護手続きが必要となります。債権者保護手続きとは、債権者に対して、会社分割について通知し、異議を述べる機会を与える手続きです。
事業譲渡
第二会社方式のスキームの一つは、事業譲渡です。事業譲渡とは、企業が、自社の事業の一部を、他の企業に売却する手法です。
第二会社方式では、経営難に陥った企業が、優良な事業や資産を、新たに設立した子会社に売却します。
事業譲渡では、譲渡する事業に関する資産や負債、契約などを、包括的に譲渡します。
譲渡する事業の範囲は、当事者間の合意により決定されます。また、事業譲渡では、従業員の承継についても、当事者間の合意により決定されます。
事業譲渡には、株主総会の決議は必要ありません。ただし、譲渡する事業の規模が大きい場合や、定款に定めがある場合は、株主総会の決議が必要となる場合があります。
また、事業譲渡では、債権者保護手続きが必要となります。
事業譲渡は、会社分割と比べて、手続きが簡単であるというメリットがあります。
一方、譲渡する事業の範囲や従業員の承継について、当事者間の合意が必要であるため、交渉に時間がかかる可能性があります。
第二会社方式を成功させるポイント
- 優良事業が好調な間に実施
- 状況に応じたスキームを用いる
- 専門家に相談する
優良事業が好調な間に実施
第二会社方式を成功させるポイントの一つは、優良事業が好調な間に実施することです。第二会社方式は、優良な事業や資産を新たな会社に移転する手法であるため、優良事業が好調な間に実施することが重要です。
優良事業が好調な間に実施することで、第二会社の収益性を高めることができます。また、優良事業の業績が良好であれば、スポンサーがつきやすくなります。スポンサーがつくことで、第二会社の事業再生が加速することが期待できます。
一方、優良事業の業績が悪化している場合、第二会社の収益性が低下する可能性があります。また、スポンサーがつきにくくなるため、事業再生が難しくなる可能性があります。
このため、第二会社方式を検討する際は、優良事業の業績を見極め、適切なタイミングで実施することが重要です。
状況に応じたスキームを用いる
第二会社方式を成功させるポイントの一つは、状況に応じたスキームを用いることです。第二会社方式には、会社分割や事業譲渡などのスキームがありますが、状況に応じて適切なスキームを選択することが重要です。
会社分割は、手続きが複雑である一方、債権者保護手続きが必要であるため、債権者の同意を得やすいというメリットがあります。また、会社分割では、分割する事業の範囲や従業員の承継について、柔軟に設計することができます。
事業譲渡は、手続きが簡単である一方、譲渡する事業の範囲や従業員の承継について、当事者間の合意が必要であるため、交渉に時間がかかる可能性があります。
専門家に相談する
第二会社方式を成功させるポイントの一つは、専門家に相談することです。
第二会社方式は、法的な手続きや税務の知識が必要となる複雑な手法です。
このため、専門家に相談することが重要です。ただし、専門家に相談する際は、信頼できる専門家を選ぶことが重要です。第二会社方式の経験が豊富で、実績のある専門家に相談することが望ましいでしょう。
また、複数の専門家に相談し、多角的な視点からアドバイスを受けることも有効です。
まとめ
本記事では、第二会社方式について詳しく解説しました。第二会社方式とは、経営難に陥った企業が、新たに別の会社を設立し、そこに優良な事業や資産を移転することで、事業の再生を図る手法です。
第二会社方式は、事業再生の有効な手法の一つですが、リスクもあります。第二会社方式を検討する際は、メリットとデメリットを十分に理解し、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に進めることが重要です。