民事再生法で借金の扱いはどうなる?メリット・デメリットなどを解説

民事再生法での借金の扱い

借金の返済に苦しみ、「このままでは事業を続けられない」「従業員の雇用も守れない」と悩んでいませんか。

民事再生法を利用すれば、借金を大幅に減額でき、事業を継続しながら再建を目指せます。

この記事では、民事再生法による借金の扱いや、メリット・デメリットを詳しく解説します。また、申立てから計画完了までの流れも、12のステップでわかりやすく説明します。

目次

民事再生法とは

民事再生法とは、経営が苦しい会社や借金を抱える個人が、事業や生活を立て直すための法的な制度です。

この制度が必要となる背景には、会社の経営悪化や個人の多重債務など、さまざまな経済的困難があります。

たとえば、返済が困難になった会社が、債権者との話し合いで借金を減額してもらい、事業を続けながら立て直しを図れます。

民事再生法の特徴は、破産とは異なり、事業を継続できる点にあります。会社の場合は従業員の雇用を守れ、個人の場合は生活の基盤を維持できるのです。また、経営陣の交代も不要です。

このように民事再生法は、債務者の再出発を支援する重要な制度として機能しています。

民事再生法適用時の借金の扱い

民事再生法を申し立てると、借金の減額や返済期間の見直しなど、さまざまな支援を受けられます。

  • 債務の減額と再生計画の策定
  • 非滅免債権(非免責債権)の存在
  • 担保権付き債権の取り扱い
  • 優先債権の全額弁済義務
  • 再生計画の履行と借金の完済

債務の減額と再生計画の策定

民事再生法では、裁判所の認可を受けた再生計画に基づいて、借金を大幅に減額できます。一般的には、債務総額の10%~20%程度まで圧縮されます。たとえば、1,000万円の借金がある場合、100万円~200万円程度まで圧縮される可能性があるのです。

再生計画では、減額後の借金の返済方法や期間を定めます。

多くの場合、毎月の返済額を調整し、3年から最長5年かけて分割返済を行います。

この計画は、債権者の同意と裁判所の認可が必要です。再生計画の認可により、債務者は管理しやすい返済額で経済的再建を目指せます。

非滅免債権(非免責債権)の存在

民事再生法による債務の減額には例外があり、それが「非滅免債権」と呼ばれる借金です。

非滅免債権には、悪意による不法行為の損害賠償や、養育費・生活費などが含まれます。

たとえば、故意に他人を傷つけた場合の損害賠償金や、子どもの養育費は減額の対象外となり、全額の支払いが必要です。

これらの債権が例外とされる理由は、債権者の権利をとくに保護する必要があるためです。

社会的な公平性や正義の観点から、全額返済が求められます。非滅免債権は、民事再生法の適用後も返済する義務が残ります。

担保権付き債権の取り扱い

民事再生法において、住宅ローンなどの担保権付き債権は特別な扱いを受けます。

通常、担保権者は民事再生法の手続きに関係なく、担保権を実行できます。

しかし、住宅ローンについては「住宅資金特別条項」を利用することで、家を手放さずに返済を継続できる可能性があるのです。

たとえば、住宅ローンの延滞がある場合でも、今後の返済を約束し、担保権者の同意を得られれば、住居を維持したまま再生手続きを進められます。

このように、担保権付き債権は慎重な対応が必要です。

優先債権の全額弁済義務

税金や社会保険料などの「優先債権」は、民事再生法でも減額できない重要な債務です。

優先債権が全額弁済の対象となる理由は、公共性の高さにあります。たとえば、税金は社会インフラの維持に必要不可欠であり、社会保険料は社会保障制度の基盤となっています。

再生計画では、これらの優先債権を計画期間内に確実に返済する方法を示す必要があります。

分割払いは認められますが、減額は認められません。優先債権の返済計画は、再生手続きの認可における重要な判断材料となります。

再生計画の履行と借金の完済

民事再生法では、認可された再生計画に従って借金を返済することで、残債務が免除されます。

一般的な返済期間は3年を基準とし、最長5年まで延長できます。たとえば、月々の返済額を5万円に設定し、3年かけて180万円を返済する計画を立てられるのです。

再生計画は、債務者の収入や生活状況を考慮して作成されます。計画通りに返済を完了すれば、残りの借金が免除され、新たな生活を始められます。

このように、再生計画の確実な履行が、経済再建への道筋となります。

民事再生法適用のメリットとデメリット

民事再生法は、経済的に困難な状況にある債務者が事業や生活の再建を図るための法的手続きです。ここでは、民事再生法適用のメリットとデメリットについて詳しく解説します。

メリット

民事再生法の適用には、事業継続や債務減額など、債務者にとって重要な3つのメリットがあります。

  • 事業の継続が可能
  • 経営陣の交代が不要
  • 債務の減額と返済期間の延長

事業の継続が可能

民事再生法の最大のメリットは、事業を継続しながら経営の立て直しができる点です。破産とは異なり、会社の事業活動を止める必要がないため、従業員の雇用を守り、取引先との関係も維持できます。たとえば、工場や店舗の営業を続けながら、段階的に経営改善を進められます。

事業継続により、顧客からの信頼も保ちやすく、売上の急激な落ち込みを防げます。また、有能な従業員の流出も最小限に抑えられ、再建に向けた体制を整えやすくなるでしょう。このように、事業継続は円滑な再建の基盤となります。

経営陣の交代が不要

民事再生法では、現経営陣がそのまま会社の運営を続けられることが大きな特徴です。経営陣が持つ業界知識や人脈を活かしながら、再建を進められます。たとえば、取引先との交渉や、従業員とのコミュニケーションも、これまでの関係性を基に円滑に進めやすいのです。

また、意思決定のスピードが落ちず、状況に応じた柔軟な対応も可能です。監督委員の監督はありますが、基本的な経営権は維持されます。この経営の一貫性は、再建の成功率を高める重要な要素となっています。

債務の減額と返済期間の延長

民事再生法を利用すると、借金の大幅な減額と返済期間の延長が認められます。通常、債務総額の10%~20%程度まで圧縮され、残りの返済も最長5年まで延長できます。たとえば、1,000万円の借金が100万円~200万円になり、それを60回の分割払いにできるのです。

この債務負担の軽減により、事業に必要な運転資金を確保しやすくなります。また、返済負担が減ることで、設備投資や人材育成など、将来に向けた投資も計画しやすくなります。このように、債務の調整は事業再建の大きな推進力となります。

デメリット

民事再生法の適用には、信用低下や担保権実行のリスクなど、注意すべき課題があります。

  • 信用の低下
  • 担保権の実行リスク
  • 手続きの複雑さと費用負担

信用の低下

民事再生法を申し立てると、企業の信用力が大きく低下する可能性があります。取引先は支払条件を厳しくし、新規の取引を控えるケースも少なくありません。たとえば、これまで掛け売りだった取引が現金決済となったり、取引限度額が引き下げられたりすることがあります。

また、金融機関からの新規融資も困難になり、運転資金の確保に苦労するケースが多いのです。既存の取引先との関係維持には、丁寧な説明と信頼回復への地道な取り組みが求められます。このように、信用低下への対応は再建の大きな課題となります。

担保権の実行リスク

民事再生法は、担保権者による担保権の実行を止められないという重大な問題があります。工場や店舗など、事業継続に不可欠な資産に担保が設定されている場合、担保権者の判断で資産を失うリスクがあります。たとえば、メインバンクが担保不動産の競売を申し立てれば、その不動産を手放さざるを得ません。

このリスクを回避するには、担保権者との事前の交渉が欠かせません。返済条件の見直しなど、担保権者の協力を得られる方策を模索する必要があります。担保権の実行は、再建計画の実現を大きく左右します。

手続きの複雑さと費用負担

民事再生法の手続きは複雑で、相当な時間と費用がかかります。手続きの開始から完了まで、一般的に6か月から1年程度を要します。また、弁護士費用は数百万円、裁判所への予納金も数十万円が必要です。中小企業にとって、この費用負担は決して小さくありません。

さらに、再生計画の作成や債権者との交渉など、経営陣の負担も大きくなります。通常の業務に加え、これらの作業を並行して進める必要があるのです。このように、手続きの負担は企業の体力を消耗させる要因となります。

民事再生法適用の流れ

民事再生法の手続きは、専門家への相談から再生計画の履行まで、以下の12段階で進められます。

  1. 専門家への相談
  2. 手続きの依頼と準備
  3. 再生手続きの申立て
  4. 保全処分の決定と監督委員の選任
  5. 債権者への通知と説明会
  6. 再生手続きの開始決定
  7. 財産状況の報告
  8. 債権の確認と認否
  9. 再生計画案の作成と提出
  10. 債権者集会での決議
  11. 裁判所による再生計画の認可
  12. 再生計画の履行

1.専門家への相談

民事再生法の適用を検討する際は、まず弁護士などの専門家に相談します。財務状況や事業の現状を詳しく分析し、民事再生法が最適な選択肢かどうかを判断します。また、必要な費用や期間についても確認しましょう。

2.手続きの依頼と準備

専門家との契約を結び、申立てに必要な書類の準備を始めます。債権者リストや財産目録の作成、予納金の準備など、具体的な手続きの準備を進めます。この段階で、今後のスケジュールも明確になります。

3.再生手続きの申立て

必要書類をすべて揃え、裁判所に再生手続きの開始を申し立てます。財産目録や債権者一覧表などを提出し、予納金を納付します。申立ては、専門家のサポートを受けながら慎重に行いましょう。

4.保全処分の決定と監督委員の選任

裁判所は債権者からの強制執行を止める保全処分を決定し、監督委員を選任します。監督委員は、手続きの公正性を確保するため、債務者の業務や財産管理を監督します。これにより、再建に向けた環境が整います。

5.債権者への通知と説明会

すべての債権者に再生手続きの開始を通知し、説明会を開催して協力を求めます。財務状況や再建計画について丁寧に説明し、債権者の理解を得ることが重要です。質疑応答も行い、不安を解消します。

6.再生手続きの開始決定

裁判所が正式に再生手続きの開始を決定し、債権者が債権を届け出る期間が設定されます。この決定により、個別の債権回収が停止され、再建に向けた本格的な手続きが始まります。

7.財産状況の報告

債務者は詳細な財産状況を報告書にまとめ、裁判所に提出します。貸借対照表や事業報告書を作成し、現在の財務状況を明らかにします。この報告は再生計画の基礎となります。

8.債権の確認と認否

債権者から届け出られた債権の内容を確認し、認めるかどうかを判断します。債権の存在や金額に問題がないか精査し、異議がある場合は調査を行います。この作業は慎重に進める必要があります。

9.再生計画案の作成と提出

債務の減額や返済方法を定めた再生計画案を作成し、裁判所に提出します。実現可能な返済計画を立て、事業の継続性も考慮します。債権者が納得できる内容にすることが重要です。

10.債権者集会での決議

作成した再生計画案について、債権者集会で決議を行います。債権者数と債権額の両方で過半数の賛成を得る必要があり、この決議が再生手続きの重要な分岐点となります。

11.裁判所による再生計画の認可

債権者の同意を得た再生計画案について、裁判所が認可するかどうかを判断します。計画の適法性や実現可能性を審査し、問題がなければ認可決定が下されます。これにより計画が正式に確定します。

12.再生計画の履行

認可された再生計画に従って、債務の返済と事業の再建を進めます。計画期間中は確実に返済を続け、経営改善にも取り組みます。この履行が完了すれば、経済的な再生が実現します。

まとめ

民事再生法は、借金を抱える企業や個人の再出発を支援する重要な制度です。

メリットとして、事業継続が可能で、借金の大幅な減額も期待できます。一方で、信用低下や手続きの複雑さなど、デメリットもあります。

申立てを検討する際は、必ず専門家に相談し、自社の状況に最適な方法を選びましょう。手続きを適切に進めることで、経済的な再生を実現できます。

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