民事再生法と倒産の違いとは？メリット、デメリットや成功の秘訣を紹介

企業経営において、財務状況が悪化し、債務の返済が困難になった場合、どのような選択肢があるのでしょうか。

民事再生と倒産は、ともに財務的な危機に直面した企業が取り得る法的手段ですが、その目的と手続きには大きな違いがあります。

本記事では、民事再生法と倒産の違いを明確にし、民事再生のメリットとデメリット、そして成功のポイントについて解説します。

民事再生とは

民事再生は、企業が抱える債務を圧縮し、事業を立て直すための法的手続きです。

債権者との協議により、返済計画を立てることで、事業の継続を可能にします。

民事再生法は、2000年4月に施行され、それまでの和議法に代わる制度として導入されました。

民事再生と倒産の違い

民事再生と倒産は、ともに企業が財務的に困難な状況に陥った際に取られる手段ですが、大きな違いがあります。

倒産は事業を終了し、清算するプロセスです。一方、民事再生は事業を継続しながら、債務の返済を進めていく手続きです。

民事再生では、債権者との合意形成が重要であり、事業の存続を前提としています。

民事再生のメリット

事業の継続が可能

民事再生の大きなメリットは、事業を継続できることです。

債務の返済計画を立てることで、事業を立て直す時間を確保できます。

これにより、従業員の雇用を維持し、取引先との関係を保つことが可能となります。

経営権の維持

民事再生では、経営者が経営権を維持できます。

倒産の場合、経営者は交代を迫られることが多いですが、民事再生では、経営者が事業の再建に携わることができます。

これは、事業に関する知識やノウハウを活かせる点で大きなメリットといえます。

資金の確保

民事再生では、債務の返済計画を立てる際に、必要な運転資金を確保することができます。

これにより、事業を継続するための資金を確保し、事業の再建に専念できます。

民事再生のデメリット

ブランドイメージの低下

民事再生を申請することで、企業のブランドイメージが低下する可能性があります。

取引先や消費者からの信頼を失うことで、事業の継続が困難になるケースもあります。

担保として提供している財産が取られてしまう

民事再生では、債務の返済計画を立てる際に、担保として提供している財産を処分することがあります。

これにより、事業の継続に必要な資産を失う可能性があります。

税金や手続き自体に費用がかかる

民事再生の申請には、税金や弁護士費用などの費用がかかります。

事業の再建には、これらの費用負担が重荷となる場合があります。

また、民事再生の手続き自体にも時間と労力を要するため、事業の継続に支障をきたす可能性があります。

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民事再生する方法

民事再生を進める上で、いくつかの方法があります。企業の状況や目標に応じて、最適な方法を選択することが重要です。

自力再建型

自力再建型の民事再生は、企業が自社の資産や事業を活用して、債務を返済していく方法です。

事業の収益性を改善し、コスト削減を図ることで、債務の返済を進めていきます。

この方法は、企業の自主性が高く、事業に関する知識やノウハウを活かせる点で有効です。

スポンサー型

スポンサー型の民事再生は、外部の企業や投資家から資金や経営支援を受けて、事業の再建を図る方法です。

スポンサーは、債務の肩代わりや事業の再編に関わることで、企業の再建を後押しします。

この方法は、自社だけでは難しい事業の立て直しを、外部の力を借りて実現できる点で有効です。

清算型

清算型の民事再生は、事業の一部または全部を売却し、その売却益を債務の返済に充てる方法です。

事業の継続が困難な場合や、事業の一部が不採算な場合に用いられます。

この方法は、事業の清算を通じて、債務の返済を進められる点で有効ですが、事業の継続が難しくなるデメリットがあります。

民事再生の流れ

民事再生を進める際には、一定の手続きを踏む必要があります。以下では、民事再生の流れを段階別に説明します。

申立て

民事再生の手続きは、企業が地方裁判所に再生手続開始の申立てを行うことから始まります。申立ては、企業の代表者や債権者が行うことができます。

（再生手続開始の申立て）

第二十一条　債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは、債務者は、裁判所に対し、再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも、同様とする。

２　前項前段に規定する場合には、債権者も、再生手続開始の申立てをすることができる。

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保全処分の決定

申立てを受けた裁判所は、必要に応じて、企業の資産を保全するための処分を決定します。これにより、再生手続中の資産の流出を防ぎます。

再生手続開始の決定

裁判所は、申立てを審査し、再生手続開始の決定を下します。この決定により、民事再生手続が正式に開始されます。

債権者への通知

再生手続開始の決定後、裁判所は、知れている債権者に対して、手続開始の通知を行います。通知には、債権の届出期間や債権者集会の日時などが記載されます。

債権者集会の開催

債権者集会では、再生計画案の説明や、債権者からの意見聴取が行われます。債権者は、再生計画案に対する同意や異議を表明することができます。

債権の届出と調査

債権者は、指定された期間内に、裁判所に債権の届出を行います。届け出られた債権は、裁判所や管財人によって調査され、認否が決定されます。

再生計画案の提出

再生債務者は、再生計画案を作成し、裁判所に提出します。再生計画案には、債務の弁済方法や事業の再編計画などが記載されます。

再生計画案の審査

提出された再生計画案は、裁判所によって審査されます。裁判所は、再生計画案の実現可能性や公平性などを評価します。

再生計画案の債権者投票

再生計画案は、債権者による投票に付されます。各債権者は、再生計画案に対する同意や反対を表明します。

再生計画案の承認決定

債権者投票で、一定の要件を満たした場合、裁判所は再生計画案の承認決定を下します。この決定により、再生計画が確定します。

再生計画の実行

承認された再生計画は、再生債務者によって実行されます。再生債務者は、計画に沿って、債務の弁済や事業の再編を進めていきます。

再生手続の終了

再生計画が完遂された場合、裁判所は再生手続の終了を決定します。これにより、民事再生手続が終了します。

民事再生のポイント

民事再生を成功に導くには、いくつかの重要なポイントがあります。以下では、民事再生を進める上で特に注意すべき点を説明します。

民事再生手続開始決定前の棄却を回避する

民事再生手続の申立てが、裁判所に棄却されてしまうことを避けるために、申立て前の準備が重要です。

申立書類の不備や、再生の見込みが立たない場合は、棄却される可能性があります。

申立て前に、弁護士などの専門家に相談し、入念な準備を行うことが大切です。

債権者への理解を促す

民事再生では、債権者の理解と協力が不可欠です。再生計画案に対する債権者の同意を得るために、丁寧な説明と交渉が必要です。

債権者に再生計画案のメリットを示し、理解を促すことが重要です。

債権者とのコミュニケーションを密に取り、信頼関係を構築することが成功のカギとなります。

実現可能性の高い再生計画案を作成する

再生計画案は、実現可能性が高いものでなければなりません。

債務の弁済方法や事業の再編計画は、現実的で具体的である必要があります。

安易な計画では、債権者の同意を得られず、再生手続が頓挫する恐れがあります。

企業の実情を踏まえた、綿密な計画作りが求められます。

まとめ

民事再生は、財務的に困難な状況に陥った企業が、事業を立て直すための有効な手段です。

倒産とは異なり、事業の継続を前提とした手続きであり、債権者との合意形成が重要となります。

民事再生にはメリットとデメリットがあり、企業の状況に応じて、適切な方法を選択する必要があります。

民事再生を成功に導くには、手続きの流れを理解し、適切な準備と対応を行うことが不可欠です。

申立ての段階から、再生計画の実行に至るまで、各段階で求められる対応を着実に進めていくことが重要です。

特に、債権者への理解を促し、実現可能性の高い再生計画案を作成することが、成功のポイントといえます。

民事再生は、決して容易な手続きではありませんが、適切に進めることで、企業の再生と発展につながります。

財務的な危機に直面した際には、民事再生の選択肢を検討し、専門家の助言を得ながら、再建に向けた道筋をつけていくことが重要です。