吸収分割のメリットやデメリットについて解説!

経営を担うみなさんは、企業再編や事業構造の変更に日々悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

吸収分割という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、具体的なメリットやデメリット、手続きの詳細についてしっかり把握しているでしょうか。

この記事では経営者の皆さんが迷わず正しい選択をするための、吸収分割のポイントを分かりやすく解説します。

どんなメリットがあるのかやデメリットは何か、正しい手続きはどのように行うのかなどを明らかにします。

この記事を読むことで吸収分割を利用した戦略的な経営判断ができるようになるでしょう。

あなたのビジネスをさらなる高みへと導く手助けとなる吸収分割についての情報を、ぜひチェックしてみてください。

目次

吸収分割とは?

そもそも会社分割とは、会社の事業の全部もしくは一部を他の会社に継承することを指し、M&Aの手法のひとつとして用いられています。

こちらでは、会社分割のひとつである吸収分割とは何かや、新設分割との違いについて解説します。

会社分割方法のひとつ

企業が一部やすべての事業を他社へ移すときに選択するM&Aのアプローチとして会社分割があり、おもに吸収分割と新設分割の2つの方法がありです。

吸収分割とは事業に関連する一部または全部の権利義務を切り離して、すでに存在する他の法人へ移すものです。

事業を切り離す側の会社を分割会社、事業を引き継ぐ側を承継会社と称して、また対価の形式により分社型分割と分割型分割に分類されるので確認しておきましょう。

新設分割との違い

新設分割は分割する事業を既存の会社ではなく、新しく設立する会社へ承継する方式で、これは吸収分割が既存の企業に事業を譲渡する形であるのと対照的です。

吸収分割では分割会社に金や資産を提供することが許されていますが、新設分割では基本的に株式の提供となります。

新設分割の注意点として新設会社は分割が正式に成立するまで存在しないので、必要な許認可をスムーズに行えない可能性がある点に注意しましょう。

そして新設分割にも分社型新設分割と分割型新設分割2つの方法が存在します。

会社分割と事業譲渡の違い

会社分割と事業譲渡はM&Aの手法のうちのひとつで、譲渡する企業の事業を全部もしくは一部の会社に承継させる点で同じですが、いくつかの違いがあります。

こちらでは、事業譲渡と会社分割の違いについておもなものをいくつかまとめました。

会社法上の違い

事業譲渡と会社分割の双方は会社の事業を他社への移動を目的としていますが、法的性質に違いがあります。

事業譲渡は株式の変動を伴わない契約であって、会社法の範囲での組織再編行為には当たりません。対照的に会社分割は組織再編行為として会社法に該当します。

この基本的な法的違いが、税務や実務での取り扱いの変化を引き起こします。

債権や債務の違い

債権者の保護手続きは、会社再編行為の通知や債権者からの異議の受け入れ期間を含むものです。

事業譲渡の際にはこの手続きが求められない一方で、個別の債務についてはその譲渡を明示的に契約書に記載しない限り、譲受企業が引き継ぐ義務は生じません。

しかし会社分割のケースでは債権者の承諾なしで全ての権利義務が包括的に譲受企業に移行します。それでも、債権者保護手続は原則として行う必要があります。

雇用関係の違い

従業員の取り扱いにも違いが見受けられ、事業譲渡においては新たな労働契約の結成が必要となる場合が多いです。

一方で会社分割時には、既存の労働契約がそのまま継続されるため個別の再契約の手間は省略されますが、労働者の保護に関する手続きが必要です。

許認可の違い

事業譲渡時は特定の許認可や免許は新たに取得する必要がありますが、会社分割では多くの許認可が包括的に承継されることがあります。

とはいえ、すべての許認可や免許が自動的に承継されるわけではありません。

例えば不動産業や貸金業のような特定の業界では、再度の取得や登録が求められることがあるため、事前にどの許認可や免許が承継可能かの確認は必須となります。

吸収分割のメリット

吸収分割は包括的な事業承継のため、事業譲渡に比べるとスムーズに承継ができたりそのほかいろんなメリットがあります。

こちらでは吸収分割のメリットについて、おもなものをまとめました。

スムーズでシンプルな承継

吸収分割の利点としてまず挙げられるのは、シンプルかつスムーズな事業の承継で、これは会社の一部の事業を効率的に移行させることが可能であるからです。

例えば事業譲渡では多くの契約の再編成や新しい許認可の取得など、さまざまな手続きが必要となることが一般的です。

しかし吸収分割を利用すれば多くの手続きをシンプルに済ませられ、大規模な事業も効率よく移行できるのが魅力でしょう。

従業員の同意が要らない

吸収分割には、従業員の同意を特別に取る必要がないという利点もあります。

通常事業譲渡を行う際には従業員の了解や同意が求められることが多いのですが、吸収分割のケースでは労働契約承継法に基づき労働契約が承継されるため、この手間が不要です。

しかし従業員の理解や信頼を得るためにも、事前のコミュニケーションは欠かせません。

成長が見込めない事業の切り離し

吸収分割を活用することで、企業は将来性の低い事業や部門を的確に整理することが可能となります。

経営資源の集中や効果的なコスト削減の策として、企業はこの手法をよく取り入れます。

具体的には収益性が低い事業を分割して新たな経営方針に従い進めることができるため、全体の経営の効率化が期待できるでしょう。

組織や株主を整理できる

多角的な事業展開や大きな組織規模を持つ企業においては、吸収分割は組織の簡素化や株主関係の整理に役立ちます。

組織が大きくなればなるほど、意思決定のプロセスが複雑化することが一般的です。

吸収分割を通じて企業はより効率的な経営体制を築くことができるとともに、意思決定の迅速化を図ることが可能となるでしょう。

承継会社にシナジーが生まれやすい

吸収分割により、承継会社はシナジー効果を迅速に享受することができるのも大きなメリットです。

具体的には新しい技術やノウハウの共有、生産や販売の拡大など、既存の事業活動を更に高めるチャンスが増えます。

このような相乗効果は、企業のさらなる成長や競争力の向上に直結する要因となり得るでしょう。

吸収分割のデメリット

吸収分割はさまざまなメリットがある反面、気を付けたい注意点がいくつか存在します。こちらでは吸収分割のデメリットについて、おもなポイントをまとめました。

株価や株主構成が変化する可能性

吸収分割を行う際は変動の一因として承継会社の株価や株主構成が挙げられます。

具体的には承継会社が株式を支払うことにより、株主の構成に変動が生じる可能性があるでしょう。

この変動が大きいと投資家の間での不安や疑念が生まれ、株価の低下を招くことが考えられます。

特に不透明な条件下での取引は、企業の信用に影響を及ぼして全体のイメージダウンに繋がるリスクがあるため、注意が求められるでしょう。

株主への説明や同意が必要

吸収分割は効率的な事業継承が期待される一方、株主とのコミュニケーションも決して欠かすことができません。

特に株主との意見が異なる場合、説明や納得を求める作業が増えるでしょう。大部分の吸収分割は株主総会での決議を要するため、多くの株主の同意が必要とされます。

反対意見を持つ株主が多数いる場合、その説得に多くの時間と労力がかかってスムーズな進行が困難になることも想定されます。

現場の負担が増加

吸収分割を進める中で、現場のオペレーションにも影響が出ることが予測されます。

事業の統合や人事の変動は、社員にとっての混乱や不安を生む可能性があり、特に統合のタイムラインが遅延すると、この負担はさらに増大する恐れがあります。

加えて評価や株主総会の準備といった事務的な作業も増えるため、事前の計画とコミュニケーションが重要となるでしょう。

税務上の取り扱いが煩雑

吸収分割の際は、税務に関する取り扱いは複雑なものとなります。

例えば承継会社の資本金が増えることにより、法人住民税や事業税の計算方法や税額が変わる可能性が考えられます。

税務の専門家と連携しながら吸収分割がもたらす税務上の影響をあらかじめ把握して、適切な対応をとることが求められるでしょう。

まとめ

これまで吸収分割とは何かや会社分割と事業分割の違いについて、吸収分割のメリット・デメリットについて解説をしてきました。

吸収分割は包括的な事業承継のため、事業譲渡に比べるとスムーズに承継ができたり従業員の同意が不要だったり、不採算事業の切り離しがしやすいなどのメリットがあります。

しかしメリットと同時に、株主への説明が必須だったり株価や株主構成が変化する可能性があったり、現場の負担が増加する懸念もあるので、事前の対策が必須です。

早期に対策を滞りなく立てるためには専門家へのヒアリングが不可欠でしょう。なるべく早めに専門家に意見を仰ぐことをおすすめします。

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