役員借入金とは?メリットやデメリット、解消方法などを解説!
節税というこの言葉に心ときめく方はあなたは一人ではないでしょう。
企業経営や個人事業主としての経験が増えれば増えるほど、税金の節約は避けて通れない課題となります。
その中で近年注目を浴びている、役員借入金というキーワードが気になっている方は多いのではないでしょうか。
役員借入金は節税対策の手段として非常に有益ですが、正しい知識がなければリスクになることも少なくありません。
この記事では、役員借入金のメリットやデメリットを分かりやすく解説します。
その最適な活用のコツまで手に入れることができるので、賢い節税術を実践する第一歩をここから始めてみませんか。
役員借入金とは?
資金調達の手法のひとつに役員借入金がありますが節税対策に有効です。さまざまなメリットのある役員借入金ですが、デメリットもあるので正しい理解が必須になります。
こちらでは、役員借入金とは何かについてまとめました。
役員借入金の概要
役員借入金とは役員が自らの資金を自社に貸し付けるお金のことで、例えば事業を立ち上げる際の初期資金不足や、運転資金の確保などに活用されます。
そうした際に役員が会社に一時的に資金を供給することで補うことができ、会計上この金額は役員借入金の名で負債として取り扱われます。
また一般的に借金と言えば利息が伴いますが役員借入金の場合、利息を設定するかしないかは会社との間で任意で決められます。
役員借入金のメリット
資金調達のひとつの手法である役員借入金ですが節税対策などに有効です。そのほかにもメリットが多い役員借入金ですが、デメリットもあるので正しい理解が必須になります。
こちらでは、役員借入金のメリットについてまとめました。
節税効果がある
役員が会社へ資金を供給する際に新株の取得という形で増資を選択できます。
しかし、増資を通じて受け取るお金は役員報酬として扱われ、これには税や社会保険料の負担が伴います。
だからこそ役員借入金が注目され、役員借入金で資金供給を行い返済という形で資金を受け取る場合は税負担が軽くなり結果的に節税効果を享受できるでしょう。
利息や返済期限がない
通常の融資とは異なり、役員借入金の利息は設定自体が任意です。
つまり役員同士の合意があれば利息なしでの融資が可能で、他の融資手段のように厳格な返済期限も存在しないため資金繰りの柔軟性が高まります。
返済のタイミングは、会社の財務状況や計画に応じて調整できるので便利でしょう。
優遇税制のメリットを享受できる
日本の税制は、会社の資本金の額によって異なる税率が適用され、とりわけ資本金が1,000万円未満の会社は税制上の優遇措置を受けることができます。
このメリットは非常に大きく、新設会社の多くが資本金を1,000万円未満に設定しているというデータも存在します。
役員借入金を用いても資本金としては計上されないため、資本金の額を増やすことなく優遇税制の恩恵を受けることが可能となるでしょう。
税優遇措置の恩恵が受けられる
役員借入金を活用すると、資本金の増加を気にすることなく会社の資金を増やすことができます。
具体的には通常の出資の場合、一定の割合以上を資本金として計上する必要がありますが、役員借入金ではそのような制約はありません。
また資本金の額による税制上の制限も回避することができるため、税優遇措置の恩恵を継続して受けることが可能となります。
役員借入金のデメリット
役員借入金は会社の資本や開業資金が不足している時に助けになってくれる便利な物ですが、つい積み重ねてしまって後に大きな被害を招くことがあります。
こちらでは、役員借入金のデメリットについておもなポイントをまとめました。
債務超過する可能性
役員借入金が増加すると実際には赤字が続いているか、銀行からの融資が難しくなる可能性があります。
この借入金は会社の負債として計上されるため、負債の額が資産を超えると債務超過のリスクが生じます。
これは会社の経営状況を悪化させて最悪の場合、会社の清算を迫られる恐れもあるでしょう。したがって役員借入金を増やす際は、そのバランスを慎重に考慮する必要があります。
金融機関からの評価が下がる
役員借入金は貸借対照表上で明記される負債で、役員借入金が多額になると自己資本比率が低下して銀行などの金融機関の評価を下げる要因となります。
自己資本比率が低いことは経営の安定性や信用力の低さを意味するため、資金調達が一層困難になる恐れがあるでしょう。
役員会で承認が必要
役員借入金で利子や担保を設定する場合は会社の利益と役員の利益との間で利益相反が生じる可能性があるため、その設定は取締役会や株主総会での承認が必須となります。
この過程では正当な利率や適切な担保設定を行うための議論や検討が求められます。
無利息・無担保の場合はこの承認は不要となりますが、それでも社内の認識を共有することが大切になるでしょう。
役員の相続財産になる
役員が亡くなった際にその役員の持つ役員借入金は相続財産として扱われ、例えば役員が1億円の借入金を持っていた場合、その額が相続税の対象となります。
多年にわたる経営の中で役員借入金が蓄積されることは珍しくありませんが、これにより相続税の負担が増大する場合があります。
よって、適切な相続時の対策や早めの役員借入金の返済計画を立てることが大事でしょう。
役員借入金を減らす方法
会社の資金繰りが厳しくて役員借入金がかさんで膨らんでしまうと、将来経営者が亡くなった際に相続税が膨大にかかる場合があるので、事前の対策が必須になります。
こちらでは、役員借入金を減らすポイントをいくつかまとめました。
債務免除
債務免除は企業が一部または全ての返済義務を免除してもらうことを指し、これは事実上の債権放棄となり企業の純資産が増加します。
ただし債務免除により得られる収益には税金がかかるため、細心の注意が必要です。
特に業績が不振の場合、繰越欠損金をうまく活用して税金の負担を軽減することも視野に入れて対策を講じましょう。
暦年贈与
暦年贈与は役員が自身の借入金を後継者などに贈る方法で、110万円までなら贈与税は発生しません。
しかし暦年贈与では借入金が移動するだけで完全に解決するわけではないので、将来的にはさらなる対策が求められることを覚えておきましょう。
DES
DESとはDebt Equity Swapの略で、債務資本交換は役員が自らの債務と引き換えに企業の株を取得する手法です。
この方法は会社と役員の双方にメリットがありますが、法人税の問題やみなし贈与のリスクも考慮する必要があります。
役員報酬の減額
役員報酬の減額は役員の給与を削減してその節約分を借入金の返済に充てる方法で、役員は所得税が減少する一方、企業は経費節約により利益を増やすことが期待できます。
役員報酬を減額して、その分を役員借入金の返済に充てることが重要です。
ただし役員報酬の額を変更できる期間が原則事業開始から3か月以内だったり、定時株主総会での決議が必要なので気を付けましょう。
増資
役員借入金を資本金に変更して企業の自己資本比率を向上させる方法です。ただしこれにより株価が上昇するため贈与税の問題に注意が必要になるでしょう。
既存の株主には価値が増す可能性があるため、その影響を慎重に評価することが重要です。
生命保険の活用
生命保険の解約返戻金を使うことで、役員借入金を減らすこともできます。
解約返戻金は終身保険のような積立型の生命保険が大きく、貯蓄型ではない定期保険の場合でも契約期間の長さに応じて解約返戻金が大きくなります。
生命保険料に損金を計上しつつ解約返戻金を簿外に貯めていき、貯まった資金で借入金を役員に返済する方法ですが、税金もかかる場合があるので気を付けましょう。
まとめ
これまでに役員借入金が何なのかや役員借入金のメリット・デメリット、役員借入金を減らす方法について解説しました。
役員借入金の活用で節税効果があったりさまざまなメリットがある反面、かさんでくると経営者が亡くなった際に相続税が膨大にかかることがあるので気を付けましょう。
経営している会社で現状どのくらいの役員借入金を抱えているのか、役員借入金をどういった風に活用しているのかを見直して、事前にリスクを減らしておきましょう。
そのためには各専門家に意見を仰いで、早い段階で準備を進めるのがおすすめです。